冬~WINTER~ case4. 三上亮
「ハックショォオン!!」
熱は38.1℃。
症状は熱、大さじ四杯。頭痛、小さじ二杯ってところで(汗)
「ちょっと。アンタ今日は家で大人しくしてなさいよ」
「無理」
「無理って…ちょっと何制服を着込んでるのよ(汗)」
「だって今日は私の誕生日なんだよ!みんなから祝ってもらいたいからダメ!」
「お願いだから変なこと考えないでよ〜」
「お母さん心配しすぎよ!大丈夫大丈夫!みんなに祝ってもらったら昼休みには家に帰るから」
「…アンタ何しに学校に行ってんのよ」
「…あ!時間がやばい!じゃあ行ってきまーす」
─バタン
「はぁ〜……って今日は一段と冷えるなぁ」
いつもより息が白いような気がして、は肩を落とした。
今日は年に一回しかない私の誕生日!
絶対に…絶対に皆から祝ってもらわないと…ね?(誰に言ってんだよ)
「よし!元気出すためにスキップしよっと♪」
と、ルンルンとスキップをしようとした瞬間、
―ツルッ
「はへ??」
寒さのため凍った水溜りに足を滑らしたはそのまま『ドスンッ』とその場に倒れこんでしまった。
「イテテ…(汗)…って、うわー。空が綺麗だー…」
私の視線は自然に空を向いていた。
どうやら仰向けにこけてしまったらしい。
コートにフードがついてたから頭を打っても平気でよかったなぁ…
そろそろ起き上がらないと…ん?
起き上がれない(汗)
なんか体がすっごいダルいよ。
「私…このまま死んじゃうのかしら」
そんなことはないか。
冷静に考えながら、私は上を見上げる。
「何やってんだ?お前」
「…ん?」
覗きこむ顔が一つ。
逆光でよく見えない。
「…んん?えーと…あ。三上じゃん」
「三上じゃん…じゃねえよ(汗)ってか何やってんだよマジで」
「何やってるように見える?」
「ひなたぼっこか?物好きだなー」
「そんなわけあるかい!ちょっと起こすの手伝ってよー」
「へいへい」
そう言いながら、彼は私の背中に自分の手を回した。
「なんか体熱くねぇか?」
「あ、うん。熱があるんだ(爽)」
「ああ!?何学校に来てんだよ」
「だって今日は私の記念すべき誕生日なんだよ!だからさ、皆に祝ってもらうためにこうやって学校にね!」
「うっわー…本当にってバカだなー」
「うっさいなー。早く立たせてよ」
「そうだな」
―ヒョイッ
「ちょっ…何お姫様抱っこしてるのよ!」
「文句言うんじゃねぇよ」
「おんぶがいい!おんぶ!」
「…テメェ…」
三上はブツブツ言いながら、をおんぶした。
「…よっしゃー!このまま学校に進め進め」
「…」
「って三上!こっちは学校と反対方向じゃん!!」
「当たり前に決まってるだろーが!そんな状態で学校に行かせられっか(怒)」
「だっ騙したわね!」
「誤解を招くような言い方するんじゃねぇよ(汗)」
「ここでいいな」
そう呟くと、三上は公園の中にズイッと入っていき、私をベンチに座らせた。
「…あら?ここは学校かしら?」
「んなわけあるかよ。ほらよ」
「ちぇっ…そんぐらい分かってるわよ…って何?」
「さっき転んで冷えてんだろ?俺様が奢ってやるから飲めよ」
「…ありがと」
三上はいつ買ったのか不明だけど、ココアの缶を持っていた。
缶を両手で握り締めながら一口、口に含む。
暖かいココアが喉を通っていく。
「うん。上手い」
火照った顔で二コリ微笑む。
「…お前さー、家に帰れよ」
「え…やだ!やだ!やだ!」
「…」
「私はみんなから『誕生日おめでとう!』って感じのお祝いの言葉を聞きたいの!」
「じゃあ俺が代わりに言ってやるよ」
「…は?」
「」
「何?」
「おめでとう(棒読み)」
「…」
「…」
「じゃあ帰れよ」
「終わりかよ!」
「ああ?文句言うんじゃねぇよ」
「文句も言いたくなるわよ!!」
「はいはい。おめでとう」
「ありがとう(棒読み)」
「うわっお前…そんな言い方したら誰も言ってこなくなるぜ」
「アンタだから言ってんのよ(しれっ)」
あれ?
…ちょっとダルくなってきた…気がする。
「お前、顔が赤いぜ」
「…大丈ブイ」
目をうつろにしながら三上にピースしてみせる。
「何処が大丈夫だよ」
「…じゃあさー、何か私を喜ばすようなことたくさん言ってよー」
「…ああ?(怒)」
「そしたら帰る」
「意味わかんねーよ」
「はい、スタート!」
「…は意外と可愛いんじゃねぇか?」
「意外とは余計だす」
「結構ふくよかな腕してるしよー」
「それ誉めてないし!ってかさっき起こす時に触ったんだろ!バカ!返せ!」
「触って減るようなもんじゃねぇだろうが!」
「三上が触ったら減る気がする」
「なんでだよ…(汗)」
「はい。もっともっと!」
「はぁー(なんで俺が…)お前って結構頑張ってるんじゃねぇの?」
「え?そっかなぁ(えへへ)」
「お世辞だ。バーカ」
「…!!?(ギロリ)」
「えーと…なんだ?お前意外と男受けいいんだぜ」
「え?」
「辰巳とかも可愛いとか言ってるしな」
「本当に??ちょっと嬉しいかも!」
「渋沢も狙ってるみたいだぜ」
「それは嬉しくない(ぼそっ)」
「なんでだよ?」
「アイツは黒い」
「よく分かってるじゃねぇか…(汗)」
「…今日は一段と冷える」
「そうだなー」
「…」
「…」
ってかうちら何やってるんだろ?
もう学校始まってるしさ。
なのに三上も三上で何やってるんだろう。
「三上さー、そろそろ学校に行った方がいいんじゃな…」
「好きだ」
「…え?」
…えーと、あのー…
「三上?」
「雪だ」
「…え?」
三上の言うとおり、空からはうっすらと雪が降ってきていた。
「そりゃあ冷えるわ」
「だよなー」
バカか私は?
『好きだ』と『雪だ』を間違えるなんて!!(あぁああ!!恥)
「寒いしやっぱり帰ろうかなー」
「そーしろよ。俺が上手いこと担任に言っといてやるから」
「やだ。三上が言ったら仮病と思われそう」
「お前…人の好意をなんだと思って…」
はぁーっと息を吐くたびに白い煙が浮かぶ。
「風邪ってよー」
「何?」
「キスすると移るって本当と思うか?」
「そんなの漫画やドラマだけじゃないの?」
「って言うかお前キスしたことあるわけ?」
「んまっっ!失礼ね!それぐらい…」
言い返そうとした瞬間。
私の唇は三上のそれによって塞がれてしまった。
彼の唇が離れた瞬間、私は咄嗟に口を開いた。
「ちょっ三上!!ちょっとオイ三上!」
「うわっお前色気が本当になさすぎだな」
「悪かったわね!ってか何今の!何してるのよ!」
「…ってか甘」
三上は露骨に嫌そうな顔をしてみせる。
「これで俺にも風邪が移ったら迷信は本当だな」
「私で試すなっての(怒)」
「あ?お前怒ってんのか?」
「当たり前でしょ!もう帰る!不快不快不快だわ!」
「お前なー、いくら俺でもそれだけ言われれば傷つくぜ?」
「傷つけ阿呆!」
スッと立ち上がると、少しヨロめいた。
「なんであんなことしたの?」
「あ?」
「キス。口付け。接吻のことよ!」
「さっき言っただろ」
「…え?」
さっき?
私が頭を傾げてるのを見た三上は、何かを思いついたように言葉を発した。
「…あ。雪だ」
「…え?」
雪はもう止んでいた。
「バーカ。好きだって言ったんだよ」
「…」
「さっき気付けっての」
「ア…アンタの愛情表現は分かりにくいのよ」
「で、答えは?」
三上はニヤリと微笑むと、私の手をギュッと握った。
答えは至ってシンプルで、
言葉に出すと薄っぺらく感じるものだ。
「あ、雪!」
私は宙を眺めて呟く。
「…あ?降ってねぇじゃねーか」
「アホ三上。好きって言ったのよ」
「…ハッ」
彼は少し苦笑いを浮かべた。
そして私もまた笑った。
誕生日に思わぬところでいい物をゲットしたと、
そういったら三上はまた笑ったのだった。
おまけ
「三上…お前、来週大会なのになんで風邪を引いて帰ってきてるんだ?」
「し、渋沢…(汗)」
「大丈夫だ。心配ないぞ。この俺がキャプテンの名にかけて、お前の風邪を明日までに治してやる(爽)」
「ち、ちょっと待てよ。なっなんで中学生のくせに注射なんて持ってんだよ!(滝汗)」
「ちょっと不破に借りてきたんだよ。心配しなくてもいいぞ!(にこり)」
「や、やめてくれーーーーー」
三上は迷信どおり風邪を引いたのでした…(汗)