「えーい!この化け物め!!」
私の頭に埋め込まれた赤い宝石は、私に生まれた瞬間から不思議な力を身につけさせてしまった。
皮膚の表面上には何も見えないのだけれど、自分には分かっていた。
─私の額には何かが埋め込まれている…って…
私に与えられた能力。
それは人の心の中に侵入してしまう能力。
「…今あなた…死にたいと思ってる?」
ふと口にした言葉がきっかけで私は国中から『魔女』という異名がついてしまった。
"気持ちが悪い"
"気味が悪いわ"
そういわれて殴られて蹴られて。
いつの間にか私は…自分が本当の魔女になってしまったような気がしていた。
「王様!この魔女を死刑に!」
「王様!この魔女を死刑に!」
「王様!この魔女を死刑に!」
「……うむ、分かった」
そして私は殺された。
十字架にくくりつけられて、
せめてもの報いで私の亡骸は十字架の後ろに保管されていたの。
けど暗闇は切ない。
だから見つけて欲しかったの。
もう廃墟と化した場所でも…
だって人が来てくれるなんて思ってなかったから。
彼女の心が直接頭に響いていた。
それはだけではなく翼たちも同様に聞こえていた。
あの光に包まれてからは…彼女の過去、彼女の言葉が全て以外の人にも聞こえていたのだ。
─ありがとう、見つけてくれて…ありがとう……
彼女の言葉に、私は無意識に彼女の亡骸を抱きしめた。
「貴方の名前は?まだ聞いてないよ?貴方は自分のことを魔女だなんていうけれど、本当の名前は…何?」
は涙を流しながら問いかけた。
彼女の流した涙が一粒…その亡骸に触れた瞬間…
柔らかな光が辺りに散らばり始めた。
─暖かい…私のために泣いてくれる人がいたんだ…
「おっおい!」
一馬の大きな声ではビクッと目を開いた。
するとそこには暖かな光に包まれた私と同じ年齢ぐらいの少女が姿があった。
─私の名前は…イザミル
「イザミル…ずっと寂しかったよね?」
はそう言うとふっと聖母のような微笑をした。
─ありがとう…
その瞬間、決して触れることのない彼女の涙に触れたような気がした。
彼女が消えたあと、今まで光に包まれていた空間がまたもとの薄暗い空間へと戻っていった。
「なん…だったんだ?」
真っ暗な部屋に戻った瞬間、柾輝は顔をしかめながら言葉を漏らす。
けど彼はそれ以上言葉を発しなかった。
それは、皆声を出すのも忘れてに見入っていたからである。
普通は気味が悪いだろう他人の頭蓋骨を泣きながら抱きしめている。
その姿はまるで聖母マリア。
奇異のような神秘のような姿に誰もが言葉を失っていたのだ。
「やっぱり…彼女はいいね」
小さな…本当に小さな声で英士は呟いた。
「え!?なっなんだって英士!?」
「別に、一馬や結人には関係ないでしょ」
「俺にも関係大有りだ!ちょっと抜け駆けは勘弁してくれよ!」
三人が大きな声でもめているのを聞いてようやくは現実に戻ってきた。
「…?私…」
何が起きたのかいまいち理解していないまま頭蓋骨を持って立ち上がる。
「…ちょっと待て、その頭を持ったまんまこっちに来い」
柾輝は妙に慎重に言葉を選びながらに言う。
「え?どういうこと?」
「だからちょっと待てってば」
柾輝は急いで"お宝手帳(これはお宝探しをメインに冒険している冒険者には欠かせない一冊!定価200G)"を開き始めた。
パラパラパラと静かに手帳を開いていく。
「やっぱり…」
「やっぱりって?」
「ほら!これ見てみろよ!すっげえお宝だぜ!これ!」
「え?」
彼が指差している場所を目を凝らして見てみる。
"イザミルの額に埋め込まれた宝石:鑑定価格6万G"
「ろっ6万G!?」
「すごいお宝だろ?」
柾輝は得意そうに笑顔で言ってみせた。
「柾輝、よく見てみろよ。お金を換金するには裏市場じゃないと取り扱われないって書いてあるだろ」
翼は呆れたように言った。
「どういうこと?」
の言葉に、翼ではなく英士が口を挟んだ。
「つまりね、この宝石はそこらの武器屋に持って行っても2Gぐらいの価値にしかならないんだよ。
裏市場だと6万Gぐらいの価値はあるみたいだけど。
まあ裏市場を探すほうが手間と時間と経験値が必要になるってことだから今は持ってても意味がないってことだよ」
ペラペラと説明する英士の姿に関心していると柾輝、って言うかお前らもかよ…!結人と一馬。
「ってことは…今日も最高のお宝は何処…かぁ」
私はガクッと肩を落とした。
「まっこれからまだまだだしね」
翼はそう言うと器用にイザミルの額の宝石を外してしまった。
「お前なんで平気でそういうこと出来るんだよ!…絶対地獄に落ちるぞ」
一馬はあえて皮肉めいた口調で言った。
「ご生憎さま。そんなことは承知の上だよ」
ニッコリと翼は笑ってみせた。
「なっなんだとぉ!」
真っ赤になって拳を向ける一馬。
「まぁまぁ一馬。じゃあまた会えたらな。椎名」
結人はそう言うと、"ちゃんまた会おうね"と笑顔を向けていった。
「じゃ、帰るか」
柾輝の言葉で私たちは神殿に別れを告げた。
そして私たちのゲームは今日も無事終了したのでした。