「おっ見えてきたぞ」
柾輝の声にと翼も彼の視線にあわせる。
「あれが…ノーリスの神殿?」
私は首を傾げながら言う。
どうしてって?だってそのノーリスの神殿って言うところは…
「どう見たって廃屋だね」
翼はうまい具合に突っ込む。
「やっぱりそう見えるよね?」
私の言葉に翼くんは静かに地図を広げ始めた。
それは普通、道具屋さんに売っている地図とは少し違うもの。
「それは?」
「これはミリチの村の牧師に貰った地図だよ。宝の地図が欲しいって言ったら内緒でくれたんだ」
「そう」
はそう答えながらも、うさんくさいと思っていた。
「今うさんくさいって思っただろ」
ドンピシャな翼の言葉がを襲う。
「ソンナコトオモッテナイデス」
「まっ行ってみるか。せっかくここまできたんだしな」
柾輝は頭をかきながらつぶやく。
「そうだね。とりあえず行ってみようか」
翼はそう言うと地図をしまいはじめた。













─ギイッ


柾輝が扉を開けた瞬間、何ともホコリっぽいにおいが外へと押し出される。




─キィン!




頭に何かが刺さったような感触。
「何!?」
は頭を抑えながら呟いた。
「どうした?
柾輝がに触れようとした瞬間、
「ちょっと待って!何か聞こえない?」
「「え?」」



―私を…見つけて…



「…?」
「どうしたんだよ?」
翼は眉間にしわを寄せながら問いかけた。
「ねえ今、私を見つけて…って声が聞こえなかった?」
「そんな声聞こえなかったよ」



─私を…見つけて…



ううん、やっぱり聞こえる。
これは紛れも泣く女の子の声だ!
私はその声のする方向へと体を傾ける。



─違う…こっち…



「…え?どっち?」
その声が聞こえるままに私は歩き出す。





「ちょっと待てよ!どこに行く気だよ?」
「まあ翼、ついていってみようぜ」
冷静にポンッと柾輝は翼の肩を叩いた。
「ああ…」
二人はの後をついていった。…が、
「あれ?いない」
豆鉄砲を食らったかのように翼は口をあんぐりと開ける。
「は?そんなはずねぇだろ?って…マジだ」
が曲がったはずの角。
二人は確実についてきたはずなのに、角の先には誰もいない。
「どうなってんだ?」
















その頃は、






─こっち…こっち…



「こっち?」
頭に響く女の子の声を聞き取りながら先に進んでいた。
見知らぬ土地で進むことは怖いけれど、誘導してくれているので少しは安心。
って…あれ?!翼くんと黒川くんの姿が見えない!!
もしかして私、さっさと一人で来ちゃった??(汗)
嫌だ…怖い…!



一人だということに気づいたは急に立ち止まり、あたりを見渡し始めた。
「ねぇ…ここどこ?」



─私を見つけてよ



「ねぇ!お願い!教えて!」
目の前にはただくもの巣が張ったホコリっぽい白い部屋。
辺りには殺風景に置かれた椅子と絵画。
「つっ翼く…」
が叫ぼうとしたその瞬間、






「あれ?見たことがある女の子がいる」
え?誰?
「あ?何言ってるんだよ結人」
「あ…確かに見たことあるな。確か飛葉中のマネージャーだったよね?」
「英士も知ってるのかよ!」
声のする方を向いて見ると見たことがある三人組がいた。
確か…この人たちは…
「……真田くんと若菜くんと郭くん?」
うろ覚えだけど記憶がある。
前に東京選抜のマネージャーとして一日だけ参加してたから。
「俺たちの名前覚えててくれたんだ!確かちゃんだよね?」
結人はニコッと笑顔で問いかけた。
その笑顔が私の緊張をほぐしてくれる。
「覚えててくれたの?」
「あったりまえだよ。だってちゃんってすっごく可愛いから有名だったんだよ?ね、英士」
「ああ、皆君のこと狙って…」
英士は言葉を言いかけて口を結んだ。
何故かというと、一人だけフリーズしている人がいたからである。
言わずもがな…一馬だ。




なんて可愛い子なんだろう…
なんで俺選抜のときに見逃してたんだ?
あっ!確かにかすかに記憶があるかもしれねぇ。
あのときは藤代に勝つことに夢中で忘れてたんだよなぁ。




─ポカッ



見とれている一馬に勢いよく英士は突っ込みを入れた。
「なっ何だよ英士!」
「お前、何ずっと見てるわけ?さん怖がってるでしょ」
「まぁまぁ…ところでちゃんは何やってたの?まさか一人で来たとか?」
「ううん!翼くんと黒川くんと…」
「あぁ、あのやけに可愛い男と色の黒い奴とかぁ」
「ひょっとして迷子になったの?」
「あ、うん…実はそうなの…」
「だったらあの二人に会うまで俺たちと一緒に行こうよ」
結人があまりに人懐っこく話しかけてくるものだからは不意に笑顔を見せた。




─ドキッ



え〜〜これ、ちなみに一馬の心臓の音。








「よっよし決めた!おっ俺がちゃんを守る!!」
「うわっ何急に大きい声出してるんだよ一馬!」
「本当にお子様だな一馬は」
「お子様じゃねぇよ!」
「かじゅまはお子様だもんね〜!(ケラケラ)」





プッ





三人があまりに仲良く話すものだから私は思わず吹き出してしまった。
さっきまで不安だったのがウソみたい。


「じゃあ…よろしく」
はにっこりと微笑みながら手を差し出した。
「「「よろしく」」」
三人の声が重なり三人が一斉にの手を求めて差し出す。



「………」



顔を見合わせる一馬、結人、英士。




「プッ」
私はまた吹き出してしまった。