チャラッチャ〜〜〜ン♪
新感覚RPGゲーム≪カルチャー・ショック≫!!
"え!?ジョン、そのゲームは一体どこが新感覚なの?"
"ヘイ!ケイシー!それはね、バーチャル空間でリアルタイムに友達と楽しめるゲームってことだよ"
"まぁ!それはステキね!!じゃあ自分の姿で自分が冒険しながらゲームが出来るのね!?"
"そうさケイシー!"
"キャーステキーー!!"
つい最近見たTVコマーシャルの一コマ。
そのときは普通に「へぇ…」としか思ってなかった。
忘れられた神殿
「おい!今日家に帰ったらすぐにあのソフトでゲームしろよ!僕、待つの嫌いって知ってるよね?」
「う゛…分かった!すぐ帰るから!」
「おい翼!今日こそ伝説の宝の地図を手に入れないとな」
「分かってるさ。ワールドカップのチケットと引き換えだからね」
柾輝の言葉に翼は勢いよく答えを返す。
そう、私たちが≪カルチャー・ショック≫をしてる目的は宝探しの旅。
このゲームにはたくさんの特典がついてるんだって。
一番早くクリアした人たちにはこのゲームの製作会社『クリプトン』から商品がもらえるの。
で、このゲームで一番貴重な宝をゲットした人には"ワールドカップの旅行券"(それも人数無制限)
なんで私たちがそれをやってるのかというと…それは今から一週間前のこと…
「これはやるしかねぇな」
と、柾輝。
「そうだね。この宝は僕たちのものだよ」
と、翼。
「頑張ってね」
と、まるで他人事のように言う私、(飛葉中サッカー部マネージャー)
「何言ってるの」
「え?何?翼君」
「お前も参加するんだよ」
「えぇえ??!!」
「三日後にはやるからね。ちゃんと準備しておけよ(にっこり)」
う゜…翼くんスマイル…この笑顔を見た人は"いいえ"なんてとてもじゃないけど言えないよ(汗)
「………はい(涙)」
と、半ば強制的に答えさせられた私。
そんな感じで私も仲間入りさせられてしまったのだ。
「お待たせ翼君!黒川君」
明らかに待ってました…と言わんばかりに表情を歪める翼。
「…お前には耳って言うもんがついてないの?何分待ったと思ってるんだよ」
「ごめんなさぃ…」
苦そうな顔をしながら翼に謝る。
「じゃ、メンバーも揃ったことだし行くか?」
そう言うと柾輝は座っていたベンチから立ち上がった。
私が冒険しているメンバーは三人。
翼君は"盗賊"で黒川君は"体術家"
そして、なんでこんなにトロイ私が…と思うけれど私は"盗賊"
最初のゲーム設定のときに"魔道士"を選ぼうとした私に翼君はこう言った。
「何してんの。お前はもう"盗賊"で登録しといたよ」
どうして…って言うヒマもなくフィールド上へ連れて行かれたのだった(泣)
「翼くん。今日はどこに行くの?」
行く場所も知らされずには二人のあとを着いていく。
二人は普通に歩いてるんだけど…私のペースだと小走りで着いていくのがやっと。
「今日はノーリスの神殿に行くよ」
「ノーリスの神殿?」
聞いたことがない名前を聞いたは眉間にシワを寄せる。
「そ。普通の地図には載ってないところなんだけどね」
「え?そんなところ…本当にいけるの?」
「僕の言うこと信じられないの?」
にっこりと笑いかけながら言う翼。
その顔は"何か文句ある?"とあからさまに言っている。
「そんなこと…ないです(汗)」
私がそう言うと翼君と黒川君はまた歩き始めてしまった。
「グルルルル…」
ん?何か後ろの方からうなり声がする…?
は恐る恐る振り返る。
そこには…
「つっ翼くん!黒川くん!」
一生懸命声を絞り出す。
なんとの真後ろには二匹のウルフが今にも襲い掛かろうとしていた。
普通とは思えないの声に気づいた二人は急いで戦闘準備に入った。
「どいてろ!」
翼の力強い声が響く。
「う…うん!」
彼の声でようやく固くなった体が少し動くようになったは急いで その場から抜け出そうとした。だが、
「あれ?動けない…!」
顔を真っ青にしてウルフの方を見てみる。
そこにはウルフの牙に引っかかった私の服。
「ちょっやだ!服がひっかかってる!」
今にも泣き出しそうな声を出しながらは足をバタバタさせた。
その姿にウルフは一番身近な彼女を狙おうと目を赤くさせた。
ちなみにウルフが目を赤くするときは戦闘準備に入ってるってことで…
って私が解説してる場合じゃなぁぁ〜い!
「グルグル…グル…」
ウルフの喉は無情にも強く鳴っていく。
次の瞬間、ウルフはめがけて飛び込んできた。
「ヒッ!」
思わず身をすくめる。
「…あれ?痛くない…?」
何が起きたのか分からない様子では顔を見上げる。
そこには数本のナイフが刺さって倒れこんでいる一匹のウルフの姿があった。
「…え?」
地に這いつくばりながらはあたりを見渡した。
するとドンドン翼がにドンドンと近づいていく。
「バカ!何やってんだよ!俺のナイフが速かったからいいもののアレがちょっと遅れてたらどうなってたか分かってんの!?」
翼のマシンガントークが炸裂する。
「だ…だって服が引っかかって」
今にも泣き出しそうなの声。
その声を聞いて翼は、少し呆れ顔になって、はぁ…とため息をつく。
「…ほら」
に手を差し伸べる。
溢れそうな涙をこらえながらはその手にしがみついた。
「ごめんなさい…」
小さく震えた声で力なくつぶやく。
「お前ら俺が一生懸命戦ってる間に何世界作ってんだよ」
あと一匹のウルフを見事にやっつけた柾輝は呆れた顔をしてこちらへ戻ってきた。
「「え?」」
二人の声が重なる。
「俺が頑張ってる間に何やってんだか」
ニヤニヤしながら柾輝は繋がれた二人の手を見た。
「何が言いたいわけ?」と翼。
真っ赤になりながら『バッ』と手を放す。
その二人を見て柾輝はククッと笑った。
「早く行こうぜ!」
翼はそう言うと颯爽と二人に背を向けて歩き出す。
「ハイハイ」
まだ笑っている柾輝。
なんで黒川くん笑ってるんだろう…。
そう思いながらはまた二人の後ろを歩き出した。