ミーンミーンミーン…
それは、ある夏の日に起きた出来事
夏~summer~ case2. 黒川柾輝
「ちょっとちょっと柾輝〜〜!!」
は"超"がつくほどのスピードで柾輝の机に向かった。
が、机に行ってみれば隣の席の六助しかいない。
「あれ?六助しかいないの?」
「ん?柾輝に用とか?」
「うん。そう」
「アイツのことだし屋上にいるんじゃないか?」
「オッケー。ありがとー!」
「おう…っておい」
「何?」
「お前今日誕生日だろ?おめでと」
「うん。アリガト♪」
私は柾輝の教室を出ると、屋上へ続く階段を上り始めた。
屋上に続く階段は、空気のとおりが悪いせいか他の場所よりも熱くて。
私は思わず汗を拭った。
─バンッ
勢いよく屋上の扉を開けると、一人の影発見。
「柾輝〜〜!」
「…ん?」
私は全速力っていうぐらいのダッシュで柾輝に向かう。
「聞いてよ聞いてよ!」
「どうかしたのか?」
「今日は、何の日でっしょう?」
「は?の誕生日だろ?」
「はい。そうでーす!」
「それがどうかしたのかよ?」
「実はさ…今日ね、机の中に…なっなんと…!」
は自分の言葉に合わせながら、制服のポケットに手を突っ込んだ。
「じゃーん!!誕生日プレゼントが入ってたのよぉ!」
「…」
柾輝は呆れたような視線をぶつけてきた。
「…何?柾輝」
「いや、お前って平和だなぁっと思って」
「私はいたって平和主義よ」
「そういう意味じゃねぇよ」
「え?中がみたいって?」
「…(自慢しにきたのかよ…汗)」
はニコニコしながら、手のひらに乗るぐらいの箱をガサガサと開け始めた。
「フフンフーン……♪ってうわっっ!なっ何これ!?」
なんと目の前に出てきたのは…
「なんで折られた押しピンが入ってんだ?」
そう。小さな箱の中に入っていたのは、先端を曲げられた押しピンの数々。
「…あのー、柾輝さん」
「ん?」
「なんか、手紙が入ってるんですけど…(汗)」
「は?読んだらいいだろ?」
「こっ怖くて読めないよ!!」
は余りの恐怖に手紙を人差し指と中指の先端で掴んでいる。
柾輝はため息をつくと、ゆっくりとの持っている手紙を取った。
「えっーと、なんだ?
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様
昨日、押しピンが指に刺さったって言ってたよね?
だから僕が教室の中にあった押しピン全部の先端を曲げて復讐しておきました。
僕からの誕生日の一部だと思ってください。
昨日の髪型、可愛かったよ。
君を見守っているクラスメイトより
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だってよ…」
「ひっひぃいいい!!」
「ストーカーってか?」
「ど、どうしよう柾輝…誕生日プレゼントの一部だって!これ!」
「お前、変な奴から好かれたよな」
「そんな淡々と言わないでよぉ!!(涙)」
「だって本当のことじゃねえか」
「…ね、ねぇ柾輝君」
「な、なんだよ」
「私たち、とってーも仲がいい幼なじみだよね?(にっこり)」
「…汗」
「今日一日、私のボディガートよろしこ(えへ!)」
「めんどくせーから嫌だ!」
「柾輝?可愛い幼なじみがクラスの変なキモイ野朗に食われようとしてるのよ!放っておく気ぃ??
ってかもし今日守ってくれたらさー、今年の誕生日プレゼントはねだらないから…頼む!!」
一瞬、最後の言葉に柾輝が反応したように見えた。
「…本当にねだらないんだな?」
「本当に(うんうん)」
「じゃあいいぜ」
「よっしゃ!商談成立!」
というわけで、クラスに戻ってきた私たち。
柾輝からは『いいか?休み時間は俺から絶対に離れるなよ』と言われた。
うん。頼りになるね、奴は!(奴呼ばわりかよ…)
─ガタン
音を立てないように、椅子に座る。
すると、机に上に白い封筒があることに気が付いた。
「………ん?(汗)」
恐る恐る封筒を忍ばせて、ゆっくりと開く。
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今の休み時間に見てくれたかな?
すごくいいプレゼントだったでしょ?
あ、そうそう。筆箱の中を見てくれるかな?
はシャープペンの芯がなくなってたから僕がいれておいたよ。
ついでに赤ペンも補充しておいたからね
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「………(蒼白)」
柾輝。助けてぇ(涙)
はガタガタと震えながら手紙を机の奥にしまいこんだ。
─キーンコーンカーンコーン
─ガタン
チャイムと同時に席を立つと、私は急いで柾輝の机へと向かった。
「柾輝ぃ!!!」
「うっわ…びっくりさせるなよ」
「で、で、出たんだって!!」
「…あの野朗か?」
「…(コクコク)」
私は目に見えない恐怖に言葉が出なかった。
「で、今回は封筒かよ」
「気持ち悪いよー!気持ち悪いよー!気持ち…」
「分かった。分かったから静かにしろって…でもこれで犯人わかるんじゃねーの?」
「…え?」
「だってさっきの10分休みにこれ置かれてたんだろ?」
「……」
「柾輝、結構頭いいね」
ポンッと柾輝の肩に手を置く。
「…それはどうも(遠い目)」
ってわけで、私は周りの席の人に聞いてみることにした。
「ねぇねぇ山野さん!さっきの休み時間、私の机に誰かいなかった?」
「さっきの休み時間?知らないよー」
「…そう」
「ねぇねぇ高田さん!さっきの休み時間…」
「私、何にも知らないよ!!(必死)」
……。
…いや、知ってるだろ?
とまぁ、こんな感じで、有力な情報が掴めずに次の授業が始まった。(←問い詰めようとはしないらしい)
「…はぁ(滝汗)」
私は今まで何一つ他人に迷惑をかけないように生きてきたはずです(それを後に柾輝に言って白けた目で見られる)
他人に威張らず(同上)
いつも道端に咲いている花のように笑顔を忘れず(同上)
そうやって生きてきたはずなんですけど(涙)
「さん…」
隣の山野さんがコソコソと話し掛けてきた。
「何?」
「これ、回ってきたんだけど」
「…はい?」
と、手渡されたのはまたもや白い紙。
「…山野さん」
「何?」
「これ、いらない。山野さんにあげるよ」
「ううん。いらない(にっこり)」
隣の女子に冷たくあしらわれた後、私はまた手紙を開いた。
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さん、さっきはずっと黒川君のところにいたね。
僕はずっと君を見てるからショックだったよ。
もしも誰か好きな人がいるんだったら、
この時間中にその人に向かって拝みのポーズをとってくれないかな?
そしたら僕は諦めるから…さ
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「………(クラッ)」
見られてますか?はい。見られてますね。
私はチラッと隣の山野さんを見てみた。
『チラッ』
『バッ』
…目、逸らされたんですけど(汗)
何かおかしくないか?
ってかその前に…この手紙のことだよ!!
えーと。好きな人に向かって拝みのポーズをしたら諦めるって?
ふーん。そっかそっかー。
ってあり得るかい!!(ぶち切れ)
畜生。
せっかくここまで『仲のいい幼なじみ』で柾輝とやってきたのに今さら告白なんか出来るかってんだよ!
あ、そっか。
柾輝はこの手紙のことなんて知らないんだし、結果オーライじゃん?(キラリ)
「よし!」
は決意すると、急いで後ろを振り向いた。
其処には、少しコックリして授業を受けている柾輝の姿。
こらこら柾輝君。授業をちゃんと受けなさいよ〜(お前もな)
…よし、やるか!
と、次の瞬間、は柾輝に向かって手を重ねて拝み始めた。
きっとその光景はとてもつもなく奇妙なものになったのでしょう(語り口調)
─キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った後、私が席から動かないでいると、柾輝がこちらに向かって歩きはじめた。
「何かあったか?」
「ううん。大丈夫よ!」
「そっか。ってか犯人わかったぜ」
「…え?」
「…」
柾輝は何も言わずに、親指を立てて後ろを指す。
するとそこには…
あれ?六助君?顔色が悪いですよ?(にっこり)
「なんかお前、しょっちゅう六助や五助とかに攻撃してただろ」
「え?シテナイヨー、ワタシシラナイ〜(しらっ)」
「しらばっくれんなっての(汗)」
「いやいや。ただちょこーっと漫画を拝借したり、ムースを隠したりはしたけど…」
「十分だろ…」
「で、なんで分かったの?」
「今の授業で六助が挙動不審だったから突っ込んだんだよ」
「そしたら全部話してくれた…と?」
「ああ。さっきの休み時間に翼に頼みこんでうちのクラスの女子に口裏合わせてもらってたらしいぜ」
「ハッ。何故にそんなに凝ったことをしでかすかね」
「お前、それだけ恨み買われてたんだよ…(汗)」
「まぁ失礼な色黒だなー」
「…っていうかよ」
「何?」
「今の時間に手紙回ってきただろ?」
「…んん?(滝汗)」
「回ってきたんだろ?」
「ワタシシラナーイ。ニホンゴワカンナーイ」
「ま、いいけどな」
ん?
「よくない!」
思わず柾輝の肩をガシッと掴んでしまった私。
「もしかしてさっきの…寝たフリ?」
「…さーな」
フッと微笑む。
「あぁ、あ、あ、あ、しっ知ってて…知っててわざと寝たフリしたんだ!!卑怯者!最低!最低色黒魔人!!」
「なんだよ色黒魔人って…(汗)」
「さぁ白状しなさいよー!柾輝ぃ!朝に約束したでしょ!一日私の言う事を聞くって!」
「最初は"お前を守る"だった気がするけどな」
「ぐっ…(図星)そ、そうだけど…でも…」
「まぁの誕生日プレゼントは中途半端に中断になったし…」
「そうよ。ギブ・ミー・プレゼンツ!」
「…複数かよ…」
「じゃあさ、プレゼントはいらないからさっきの答え!」
「さっきのはもう分かりきってるだろ」
「…………ん?やっぱり聞いてたんだぁ!!(涙)」
「ま、一生お前を守ってやるからチャラな」
「…え?」
「…」
「もう一回言ってくださいな?」
「じゃあ席に戻っかな」
「あ、あのー…柾輝さん??聞こえてましたぁ?」
「気が向いたらな」
そう言って席に戻っていく。
…もしかして…今、私…告白された???(ドキドキ)
そんなことを思っていると、隣の山野さんがとても怪しい笑顔でこっちを見てきた。
…皆分かってたんですね(恥)
その後、飛葉中サッカー部の中で、冷やかし攻撃を受けたことはいうまでもない。
(そしての畑兄弟への嫌がらせに拍車がかかったのも言うまでもないでしょう…)