「真田君、昨日の企画まとめた?」
「あ、まだです!」
「急いでやってくれよ!緊急だって言っただろうが!」
「はい!」
俺は急いで部屋を飛び出した。
つーか、昨日の企画なんか帰り間際に言ってきたくせにまだやってないに決まってるだろ!
あー…マジいやだ。
1課の課長…陰険すぎる。
「えっと…これをコピーして、データを打ち込んだのを参考にして電話をかけて…」
うわ。
やることが多すぎ(涙)
今日は友達の英士と結人と三人で飯食おうって話してたのにな。
「…あ」
俺は思わず声を漏らした。
目の前で歩いていたのは、同じ課のだったからだ。
手に書類っぽいの持ってる。
今から印刷室にいくのかな。
だったらこれもついでにコピーしておいてほしいんだけど…
でも俺、苦手なんだよな…のこと。
同期の女って結構キャピキャピというか、向こうから話しかけてくれるから仕事とか頼みやすいのに。
は本当に必要最低限のことしか話してくれない。
だから仕事を頼むときはこっちから言わなくちゃならないからタイミングが…なぁ。
「なに?」
「ぇ?」
前を見ると、さんが振り返っていた。
「あ、今からコピーとか…?」
なんで俺こんなにおそるおそる聞いてるんだろ…(涙)
「そうだけど、どうしたの?」
表情を変えずに彼女は言った。
なんかさんのこういう表情は、同期の女子社員に比べて大人っぽくみえる。
「これもついでに5部ずつコピーしておいて…」
チラリ。
うわ。目があった…(ビクビク)
「ほしいんだけど…」
なんか情けないよな…俺。
明らかに最後のほう、小声になっちまったし。
「いいよ。ついでだし」
「あ、ありがとう。まじ助かる」
彼女の言葉に少しホッとして、俺は書類を手渡した。
そして、背を向けて歩き始めて数歩して、俺は振り返ってみた。
こちらを絶対に振り返らなさそうな雰囲気。
今までも、に対して何度か違和感を感じたことがある。
あいつ、笑って同期の奴と話してるけど、なんか違うんだよな。
会社帰りに、偶然デート中のを見たことがあるんだけどさ、今まで見たことがないぐらいの笑顔で彼氏を見つめてた。
あの表情、会社じゃ絶対見せたことないよな。
あと、総務課のって奴とお昼一緒に食ってるところも見たことがあるけど。
あの時もいつもの顔と全然違ってた。
豊かに表情が動いてるっていうか、本当に見たことがない顔ばっかりだったからすごい印象に残ってるんだよな。
「…ま、関係ねーけど」
一言漏らしてまた部屋に向かった。
時刻は6時過ぎ。
定刻通りに仕事も終われたから、英士と結人とご飯も食える〜(爽)
ちなみに英士はこの会社の企画課にいて、結人は隣の観光産業の会社に勤めてる。
「英士も終わってるかな」
俺はウキウキした感情を抑えきれずにフロントへと向かった。
その後、英士の強い希望により俺たちは某韓国料理を扱ってる店に入ってご飯を食べ始めた。
「なぁなぁ英士、一馬」
チヂミを食べながら結人が口を開く。
「なに?」
「ん?」
俺たちが首を傾げ、箸を止めると、結人はにんまりと笑い、言い放った。
「合コン行こうぜ」
「「…は?」」
俺と英士の声が重なった。
「大学の時のサークルの友達でさ、今OLやってんだけど合コンしないか?って」
「…」
数秒沈黙の後、それを破ったのは一馬だった。
「や、や、やだよ俺!」
合コンとか冗談じゃねぇ!
ただでさえ人見知りするっていうのに…!(汗)
「ばーか。一馬!お前のために組んでやるようなもんだぜ」
「え?」
「もうかれこれ3年ぐらい彼女いねーだろ!そんな親友を心配して、だな…」
「結人は合コンに行ったときの一馬の反応が見たいだけでしょ」
「あ、バレた?(笑)」
結人の奴…「さっすが英士だなー」なんて笑ってる場合じゃねーって!(涙)
「お、俺絶対に行かないからな!」
「かーずーま…諦めろって」
結人はいやみなほどニヤニヤして一馬の肩に手を乗せた。
あー。
なんでこうなっちまうんだよー!(涙)