さーん!これ、10部ずつコピーとってきてー」
「わかりましたー」
荒く渡された書類を落とさないように一生懸命抱えて印刷室まで走り出す。






私の名前は
OL生活8ヶ月目。
勤務してるところは結構大手のコンピュータを製品として取り扱ってる会社。
そして、そこの広報課に所属しているのが私なのだ。



この仕事もだいぶ慣れてきたし、彼氏もできたし…で、とても充実した毎日を送り中v



しかも彼氏は、前に取引の関係でうちの会社に来た人なんだけど。
すっごくやさしくて、硬派で、男らしくて…本当最高の人なの。
名前は城光与志忠っていって私の1コ上なんだよね。
24歳にして早くも取引会社に課長の代理で来るような…本当にしっかりしてて素敵な人!!



え?
出会いのきっかけが知りたいって?
それはね、それはね(むふふ)
会社帰りに友達のと一緒にゴハン食べてたら、偶然出会ったの!
そこで、私が「ここで話しかけなくちゃ始まらない!」って思って携帯番号とメルアドを交換したのが始まりなんだよね。
そこから友達として始まって2週間後。
向こうから告白してもらえて付き合い始めたのだ!(ちなみに今1ヶ月目vv)






「今日も絶対に定刻どおりに仕事終わらせるぞー!」
は小さくガッツポーズをとりながら独り言を言った。



と、その瞬間。
「あ!」
後ろから声が聞こえた。
どうやら私に向けて発せられた声らしい。
「ん?」
振り向くと、後ろには同じ広報課に所属している真田一馬が立っていた。
「なに?」
必要最低限の言葉だけをつぶやく。
実は男の人苦手なんだよな、私。
というよりも、同期の女と男の社員で合う人がほとんどいないから普段はこんなテンションで話す癖がある。
唯一この会社で友達なのは、高校からの友達のぐらいだし。
後の人たちは普通にしゃべるけど、外面だけよくしてるだけ。



「あ、今からコピー…とか?」
「そうだけど、どうしたの?」
私がそういうと、彼は右手に抱えていたファイルの中から4,5枚の書類を取り出した。
「これもついでに5部ずつコピーしておいて…
ほしいんだけど
明らかに最後のほうが小声だよ…(汗)
「いいよ。ついでだし」
「あ、ありがとう。マジで助かる」
真田君は顔を真っ赤にしながら頭を下げた。
別にアンタだからってやってるわけじゃないからね。
あくまでついでよ、ついで!
ま、こんなこと口には絶対に出せないけどね。



私が書類を受け取ると、彼は急いで背を向けて走り始めた。
他に仕事があるんだろうなぁ。
私は2課だけど、彼は1課だもんね…
2課は会社内の広報担当。でも1課は外回りとか取引が多いもんなー。



「私も早く企画とか出したいなー」
うう。古くからある会社のせいで未だに女子社員イコール男子社員の下って定義はどういうことよ(けっ)



まぁ気を取り直そう。
今日はヨシさんとゴハンだし(えへへ)









とまぁ、こんな感じで。
このときまでの、真田一馬のイメージはそんなものだった。
そこらにいる男子社員と同じ存在で、目つきが悪くて、意外と女の子から人気があって(去年のバレンタインで本命が5,6人いたとか…)
男の人とは普通に話すくせに、女の人と話すときはブスッとしてるか、きょどってる感じ。
私のときはキョドるパターンね。



けど、近々、そのイメージと私たちの関係は大きく崩れることとなる。












「遅れてすみませんー」
待ち合わせの大きな時計台の下には、腕にスーツの上着をかけた城光さんが立っていた。
背が高いから、サマになってるよなぁ…。
うっとりした目線で見つめる。



「ああ、。大丈夫とよ、そんなに待っとらんし」
「いやいや、ごめんね」
実は化粧直しに少し時間がかかってしまったなんて言えない。
だって一週間に1,2度会えるのがいいほうなんだもん。
会えるときぐらい、最高の自分でいたいじゃない?
だから今日の服も最近買ったばかりのオニュー★



「…」



ん?
あれ?視線感じる。



パッと、彼のほうを見ると、彼は真剣な顔で私を直視していた。



「な、な、なんですか??」
突然の行動に、声が裏返りそうになる。
落ち着け落ち着け(ドキドキ)



「あのな、
「はい?」



やだ。なんでそんなに見つめてるんだろう。
も、も、もしかして顔に何かついてるとか?
鼻毛とか…鼻毛とか出てたりしたらどうしよう??(ひぃ)


「!?(汗)」
私はすぐに自分の顔を手で覆い隠した。
「な、なんばしとっと?
彼があきれたように言葉を漏らす。
「だ、だって、そんなに見るから…もしかして顔に何かついてるのかなって…」
顔を真っ赤にしながら彼を見つめると、彼は苦笑いしながら口を開いた。



「なぁ
「はい?」



一体なんだろう。
も、も、もしやプ、プロポーズ!??
いやいやいや、まさかね。
だってまだ付き合って1ヶ月だし…
で、でも私彼なら…結婚したい…なぁ…なんて(エヘエヘ)



「俺たち別れよう」
「…」



は?



「今…なんて?」
「いや…やけん、俺たち…別れんか?」
「…な、なん…なんで?」



付き合って1ヶ月。
前のデートとかも最高に楽しかったし、なんで?
なんでなんでなんでぇえええ!?



「私…が…やっぱり顔とか…か、可愛くない…から…?」
コンプレックスだった顔のせい?
いつもそれをごまかすために化粧を濃い目にしてたのがバレたの?
ううん。だ、だって、ホテルに行ったときも絶対にスッピンを見られないようにしてたからそれはないはず(う、うん)



「そうじゃなか」
「…な…じゃあ他に好きな人が…?」
あ…
その可能性が一番高いかも。
だって彼と私は会社違うし。
彼みたいにやり手の社員がいたら、女の子は放っておかないし。



「違う」



それも違うの?
「だ、だったら…どうして…?教えて…よ」



…お前はな」
「…うん」
「俺とおるとき、いつも気を張っとったやろ」
「…え?」
それはそうだよ。
好きだから、緩んだ姿を見られたくないよ。
「俺はな、いつもが本音を見せてくれてなかったのが辛くなったんじゃ」
「そ、そんな…」



だって私の本当の姿なんてみたら絶対に引くし。
家だったらジャージにTシャツだし。
それどころか髪の毛も一本に束ねてるしメガネだし。



「それにはずっと俺を家にあげようとしてくれんかったやろ」
「だって私の部屋汚いし…」
「それでも構わんかったとよ。のすべてを受け入れる気持ちは持ってたんやけどな」
「そ、そんな…」



だって絶対に引くもん。
実は未だに漫画が好きで毎月5000円以上は単行本に使ってるし。
あの膨大な漫画の量を見て引かない人はほとんどいなかったんだよ。
それに年に数回はコ、コミケに参加してるし!
そんなの言えるわけないじゃない!!
部屋に入っても隠しきれる自信なかったのよ。
分かってよ…



好きだから隠したかったの。



「じゃあ…すまんな」
「や…ちょっと待っ…」
「…」



気づいて。
好きだったから。
本気で好きだったから知られたくなかったんだよ。



「…っ!」
急に涙がこみ上げてきた。
彼の背中はどんどん見えなくなってきてるっていうのに、涙がどんどん溢れてくる。
胸が苦しい。
「っひ…ひっく…」
手を添えても涙はポロポロ落ちていって。
頑張ってメイクした顔ももう最悪だ。
見れるもんじゃない。
目はマスカラがとれてパンダになって、肌もファンデがとれて、毛穴が開いた肌があらわになってる。



「…う…ぁあ…」


声にならない涙を漏らしながら、私はその場に立ち尽くした。















「よし。私が合コン開いてあげる」
「…は?」



次の日の帰り道、の家でフラれた報告をした後のこと、彼女はボケッとしてる私の顔を見てもう一度言った。
「だから、合コン開いてあげる」
「は!!?い、いいよ!大体まだ痛手も治ってないっていうのに」
「大丈夫だって!痛手は早いうちに治療しておくものよ」
「そ、そういうもんか?」
「そういうものよ」
そんなものじゃないよ。
まだ心はヒリヒリしてるっていうのに。
「…やっぱりやだぁ…」
「ま、出会い云々っていうよりも、少しは気晴らしになるんじゃない?」
はニッコリと笑った。