引っ越した友人の美奈子に彼氏が出来ました。
「ねぇ…私ね、とうとうしちゃったんだぁ」
電話越しから聞こえる妙に明るい彼女の声。
その瞬間、何となく嫌な予感はしていた。
「何を?」
私は嫌な予感が当たらないように当たらないように…と祈りながら興味なさ気に尋ねる。
「彼氏とヤッちゃったぁ…!キャハッ!」
「やっやっやっやった!?」
「そう!とうとうね!」
「とうとう!!??」
アンタ!ちょっとちょっと!私たちはまだ可愛らしい中学三年生なんですよ!?
それなのに…やっ…やっ…////(←恥ずかしくて最後まで言えない)
「もう彼氏ったらね、首筋にぃ…」
「言うな!!それ以上は許さん!!」
「もう何よ〜ったらそういう経験とかないわけ?もう私たち十五歳なんだよ?
寂しくない?ってか中三で何もないのも問題だよ!」
「はい?」
「でもは男なれさえしてないもんねぇ?やっぱり無理かぁ(明らかに嫌味気)」
「そっそんなことないわよ!私だって経験の一つや…」
「一つや?」
「二つぅ…?(汗)」
「まぁまぁウソはつかなくていいのよ。はおこちゃまでちゅからね」
殺したろうかコイツ!!?(キレ気味)
「ウソじゃないってば!じゃあ次に会ったときに紹介してあげるわよ!もうすっごいわよ私の彼氏!!」
「へぇ、付き合ってどれぐらいなの?私に報告してくれなかったけどさぁ」
この野郎…信じてねぇな…(怒)
つーか…誰だ…?
私の彼氏って…(汗)
「えっと…に…二週間ぐらい…?」
「ふ〜ん。じゃあもうキスぐらいは済ませてるはずよね?」
………(汗)
「そうね…もう…それ以上のこともやっちゃってるわよ〜!」
「ふ〜ん。だったらさ、一ヵ月後ぐらいにそっちに遊びに行くからさ。紹介してよ?」
「しょ、紹介…?」
「そっ。出来るはずだよねぇ?」
むっ!コイツ、まだ疑ってたのかよ!?
「い、いいわよ?見せてあげるわよ!一ヵ月後ね?わっわかったわ!」
「楽しみにしてるからねぇ〜。(ピロピロ〜♪)あっ彼氏から電話だぁ。また電話するね〜!どんなキスをしたとか教えてよね。
私ってやっぱりオーソドックスな付き合い方しかしていわけだからぁ(これは多分嫌味と思われる)じゃあね♪』
「バイバイ!(強調)」
―ピッ
どうしよう。
とんでもないウソをついちまった…!
彼氏なんていないし、さ?
まともに男子とも会話してないんですよね…私って。
やばいって!やばいって!マジでやばいって(泣)
はぁダメだなぁ。どうも美奈子が相手だとムキになっちゃうんだよね。
そういうときは…麻美(親友)に今の思いを手紙で伝えましょうかい…(古風に…)
(注)ちなみにの愚痴はいつの間にか麻美が聞いてやる役目になっていたのだった。
というわけで、そんな恥ツラツラのお手紙(総10ページに及ぶ)を学校に持っていったってわけです。
ですが、放課後、事件は起こりました。それは…
「ギャ〜〜!!てってっ手紙落としたぁ!!」
「手紙?」
「そう!麻美に渡そうと思った…」
「別に変な内容じゃなかったんでしょ?」
「!?」
いや、やばいんですよ。
なんかうっすら記憶なんですが…
彼氏がほしいとか。
彼氏がいなくてもせめて美奈子に自慢できるような経験をしてみたいとか。
中学校時代にはバージン脱出とか。
そんな恐ろしいことを書いた記憶があるんですよ。
やばいんですよ。いや、マジでやばいんですよ(汗)
あんなのを誰かに拾われたりしたら…(ひゃあぁああぁ〜!!)
「どどどどどうし…」
「おい」
「…え?」
突然の声には急いで振り返る。
そこには、
「み…三上」
そう。クラスで一番カッコいいと予想されるであろう三上亮の姿。
「ちょっといいか?」
「え?うん」
彼に連れ出されるままに私は教室を後にした。
これを機会にジッと三上の顔を見つめる。
確かにコイツは顔はいい。
だが性格は最悪(らしい←しゃべったことがないので分からない)だし、
女たらし(っぽい←たれ目で判断)だし…
けどこんなのが彼氏だったら…きっと美奈子はヨダレを垂らして羨ましがるだろうなぁ。
「…あっそういえば…三上、何?」
「コレ拾ったんだけど」
そう言いながらピラッと私に差し出すのは例の手紙。
「ブッ!!!」
「うわっお前汚ねぇーな。ツバが散っただろーが」
「みっみっ見て…ないよね?(ニッコリ)」
「…(ニヤリ)」
目の前には口の端を持ち上げて笑う三上の姿。
あっははぁ(狂)これが後輩が言ってた三上のデビスマってやつぅ?
ってその顔はさぁ。やっぱりアレだよね…?(汗)
「見た?(首を傾げながらニッコリと)」
「ハッ当たり前だろーが」
うわぁ。悪魔です。悪魔がいます此処に!
そんな狼狽するの姿にますます三上は笑みを浮かべた。
「お前さ、彼氏がほしいわけ?」
「!!」
顔が真っ赤になっていく。
ヤバイ!これじゃあ図星ってバレバレです!(汗)
「で、何だっけ?自慢できるような経験がしたいとか書いてあったなぁ?」
「くっ口に出すな〜〜!!」
畜生!コイツ絶対にバカにしてる!!
「もういい加減に…」
「俺が試しにやってやろうか?」
「……え?」
「だ〜か〜ら、俺が試しにやってやろうかって聞いてんだよ」
「……はい?」
目をパチクリさせながら問いかけるの姿に三上は少し困惑した表情を浮かべる。
「だから…」
次の瞬間、三上はの顔の数センチ手前に顔を近づけた。
そして、さっき見せたデビスマを浮かべてもう一度問いかける。
「経験したいんだろ?」
真っ直ぐに見てくる彼の視線に、体と心が金縛りにあったかのように動かなくなる。
「…うん」
自然に言葉がこぼれた。
「オーケィ。俺が恋愛の仕方、教えてやるよ」
ニヤリと微笑む三上の姿に、一瞬でもときめいた自分。
時間差でやってくる顔に帯びた熱。
もう後戻りはできない。
「じゃあ手でも繋いでみるか?」
「ふぇへ?」
「お前変な声出すんじゃねぇーよ…」
呆れた口調で言った後、数秒間だけ沈黙が流れた。
「………」
私…この人とどうなっていくんだろう。
この人と最終的には……キャーー!!はっ恥ずかしい!!
「お前何一人でコントやってんだよ(汗)…いいから…手、貸せよ」
そう言うと、彼は私の手を強引に掴んだ。
初めて触れる男の人の手は少し冷たくて自分の体温が上がっていくような気がした。
やだなぁ、緊張する。
「…お前、変な汗つけんなよ」
「しっ失礼ね!」
少しギクシャクしてるのが自分でも分かる。
こんなの…自分らしくない。
なんだか心と体が繋がってない感じ。
「…おいおい、もっとリラックスしろよな」
「よっ余計なお世話よ!」
顔を真っ赤にしながら返す。
数分後、
「次はキスだな」
「え゛ぇ!?まっまだ早いよ!!」
「そーかぁ?じゃあ次は……なんだよもうセックスがしてぇのか?(ニヤリ)」
「いっいやぁ!!」
私が美奈子に彼氏を自慢できるようになる日は………意外に遠い日かもしれない(汗)