「お前ら…マジでウザイ…」









アノ頃の僕はまだ子供で、そう考えることしか出来なかったんだ。









遡ること5時間前。
まだ柾輝が倒れてなくて、砂漠の中に入る前のこと。
船の中で僕は静かに考えてた。
去年の夏の…まだ飛葉中に転校する前のこと。









ジリジリと肌を刺す太陽が、あのときの僕を思い出させていく。
















『椎名君!ここの問題教えてほしいんだけど…』






『なんで椎名なんかに成績負けなくちゃならないんだよ!またママにしかられるじゃないかぁ!!』






うざい。






『よくやったな椎名。これでお前は何処の高校でもやっていけるよ』






『サッカー?椎名君って意外な趣味があったんだな』






うざい。







あぁ…うざい。
















『うっわ…すっごーい!!サッカー上手なんですね!黒川君と…どっちが上手なんだろ?』








変な奴…






『翼、俺たちのサッカー部は最高だぜ!』






恥ずいだろ…バッカじゃないの?













それでも心の中は満たされて。
一番助けられてたのは僕だったんだ。






だからこそ…あんまり思い出したくないんだよね。
あのときの記憶って…











「翼君?」
「…あぁ
「どうしたの?ボーッとして」
「別に大したことないよ」
「そう。なんか黒川君よりもダルそうだから…」
「そんなことより自分のこと心配したら?」
「わっ私は大丈夫だよ!」









今が幸せだから。
手放したくない幸せだから考える。
…というか考えた。





















「私…汚い」






イリアが親友たちを見捨てた時の気持ち。
どんなに辛かっただろう。
どんなに悲しかっただろう。
もしもそれが僕だったら…きっと僕は自分が犠牲になるね。
でも…何だかんだで結局自分は生き残ってると思う。






きっと僕が行くなんて言ったらあいつ等が反対するだろうから。






なんてきっと僕には内緒で生贄の場所に行くんだろうな。
平然なフリをして…僕に心配をかけないようにして。
けど目が充血してて多分気づくっていうオチなんだろうけど。






だからさ…
イリアが壊れた人形のようになったのも分かるよ。



















アンタは…見殺しにしたわけじゃないだろ!
いつの間にか翼は声を張り上げていた。
自分でも気づかぬうちに…
「…翼君?」
「俺…アンタの気持ち、分かるよ。痛いぐらいにね」
『ハッお前みたいな女に何が出来るっていうんだ?』
インプは掴んでいたイリアの胸倉を緩め、翼の方を睨みつけた。
「…女じゃない!!(怒)」
インプが怯んだ一瞬、翼は素早く奴に向かいナイフを投げつけた。
いつも以上に翼のナイフさばきは速く、ナイフは目にも留まらぬスピードでインプの額に突き刺さった。






『いつの…間に…』






が、インプはそれだけでは死に絶えず、最期の力を振り絞り翼に近づこうと手を伸ばそうとした。







「もうあんさん諦めたらええんとちゃう?」






ニカッと笑った八重歯が印象的だった。
宙を舞い現われる金髪の少年。
『誰だ!?』
インプがシゲを見ようと振り返った隙に、シゲは自分の耳につけていたピアスを一つ外した。
「悪魔系モンスターには光系…やろ?」
ニヤリと微笑む。
『なっ…』
インプの顔に汗がにじんだ瞬間…
シゲは勢いよくピアスをインプに向かって投げつけた。






─ドスッッッ!






小さなピアスとは思えないけど鈍い音があたりに響き渡る。
『たか…が耳飾に…何故?』
「まだ気づかんとはアホやなぁ〜。そのピアス、白色やろ?旅商人はな、いつでも戦える準備をしとるんや。
せやからいつでも武器になるようなものを身につけなあかん」
シゲは口の端を上げて笑うと、自分の耳につけていた他のピアスを触り始めた。
耳には、赤、青、黄、緑…など、多色のピアスが身につけられている。
口には出さないが、きっと赤は『炎』、青は『水』、緑は『森』など自然の効力が秘められているのだろう。
多分白色は『光』の効力を持っていて…






ちくしょう…ギャァアァァ――――!
シゲが振り返る間もなくインプはシュゥ〜と煙のように空へと舞い上がっていった。
彼が煙になった直後、小さな鏡が『カシャン』と地面へ落ちた。






「今日は機嫌が悪いんだよ。藤村、お前が出なくても多分勝てたぜ」
高い声にならないように押し殺した低い声で呟く。
「ほーさよか。まっええけど」
手をヒラヒラさせながら翼の元へ歩いていく。






「…それで、コレが藤村の言ってた鏡ってわけだね」
翼は鏡を拾うと、小さくため息を漏らした。
「真っ黒やな」
シゲも厳しい顔を見せる。
その黒さは予想していた以上にドス黒く、不気味さを漂わせていた。













「…大丈夫?イリア」
はイリアに話し掛けていた。
イリアの顔は蒼白していて、触れようとした瞬間『ビクッ』と拒絶反応を示す。






「アンタ最低だね」
「つ…翼くん!?」
「自分の命を大切にしようとしない奴に死んだ方が楽だなんて思われたくないね」
冷たく言い放つ。
「…そうね。私…汚いわ」
「え?」
「私一人の命だけで皆を救うことが出来たのに、私は皆を見殺しにした」
「イリア…」
「私なんて生きている価値もない…」
「…」
「スゴク汚い…」
「イリア、違うよ」
「違わない!!スゴク汚いもの…私。本当は怖かった。
最初は私が身代わりになれば…て思ってたけど、怖かったもの!!自分の命乞いをして…沢山の人を…」
「じゃあどうして子供たちは皆死んだんだと思う?」
「…え?」
「イリアが好きだったからだよ。文句も言わずに皆が命を落としたのはイリアをそれだけ信頼してたから」
「でも私は…人間の心がない…」
「そんなことないよ!シマさんの…彼女のミイラを見たときに泣いたりしないはずだよ?」
「シマ……大事な親友だった…失いたくなかった…でも…」
「…でも?」
「死んじゃった…ヒック…死んじゃっ…た…ヒグッ」
は泣きじゃくるイリアの体を自分の元へと抱き寄せた。
そして、優しく抱きしめる。
「皆がいなくなるのに何も出来ない自分に嫌気が指したよね?でも悲しまないで…大丈夫だから…」
「…っ!」
イリアは今まで見せたことが無いほど子供のように泣きじゃくった。
「…大丈夫だよ」
の言葉が優しくて、凄く心に染みて、涙が溢れる。












「お取り込み中悪いんやけどな、イリアやったっけ?あんさんにいい知らせがあるんやけど」
「…え?」
「姫さんの持ってる鏡な、あれを…」






『あれを割れば、みんなの命は元に戻るよーん』






「「「………!!?」」」






沈黙が走る。
今の声は…何??(滝汗)






『此処!此処!』
「…え?」
私は声のする頭上に目を向けた。
そこにはボールの形をした、糸のように細い目鼻立ちをした生き物がフワフワと浮いていた。
そのボディは神々しく輝いている…
『僕の名前は太陽神アッラー』





……
……





「「「―――は!?(汗)」」」
皆の声が重なる。






『インプの奴等に背後を取られてね(ふぅ)、ついさっきまで岩に封印されてたんだ(あはー)』






………(汗)
翼君…固まってますよ(汗)
藤村くんなんて突っ込みどころを探してます(滝汗)




「…貴方様が…アッラー様なのですか?」



貴方様っ!?(汗)
その響きにはちょっとビックリしたけど、
イリアの涙が少し止まっていることに安心した。




『今まで辛かったろう?これからは大丈夫!!
…のはず(小声)モンスターなんぞに負けないように頑張るからね!』
フワフワ浮いていて覇気がまったくないアッラーの言葉。
けどイリアにとってはそれが救いの言葉だったんだと思う。
アッラーの言葉を聞いたイリアは、また涙を流した。






『ほら、鏡を割ってみなよ。ミイラから元の姿に戻るには一日ぐらいかかるが、体に別状はないはずだよ』
「ほら、イリア」
ひょいっと翼はイリアに鏡を渡した。
「あっはい…」
『それを…思いっきり床に叩きつけるんだ!』
「…はい!」
イリアはアッラーの言葉どおりに鏡を自分の頭上から振りかざし、勢いよく床に叩き付けた。






─ガッシャーン!!






鏡が割れた瞬間、辺りには白い煙が立ちこめ、それらはミイラに向かって伸び始めた。
そしてミイラの口内に白い煙が入り込んでいく。






思わず息を呑んでしまう。
それもそのはず…さっきまで屍となっていたミイラの顔には生気がみなぎり始めたのだ。
勿論、シマの顔にも…
「シマ…」
イリアはシマの体を抱き寄せると、涙を浮かべて何度も『ゴメンね』と囁いた。



















「じゃ、城に戻ろうぜ。柾輝を迎えに行かなくちゃいけないし」
「あっうん。でもイリアは…」
「一日したら皆の体が元に戻るんだろ?だったらその時まで一緒に居たいんじゃないの?」
「…そうだね!」
もう一度イリアを横目に私は呟いた。
『良かったね』って。
私なんかじゃ全然力になれなかったけど、イリア…貴方はこれからきっと上手くやっていくと思う。









「…あっ藤村くんはこれからどうするの?」
がシゲの方を見ると、シゲはなにやら怪しげにコソコソと動いていた。
「あー…俺はまだ用があるさかい、ここでお別れや。ちゃんにまた会える日を楽しみにしてるで♪」
ニヤニヤと手を振ってくるシゲの姿を見て、私はホッとした気分になった。
「じゃ戻ろうか
「うん!」
















「さぁ〜て、アッラーさん周りも静かになったことやし…聞きたいことがあるんやけど(ニヤリ)」
『なんだい?』(プカプカ)←浮いてる音
「この山は財宝がガッポガッポ取れるらしいなぁ〜」
『なっなんでそれを…(汗)』
「さぁ〜てなvvじゃ教えてもらいましょか?」