「よう姫さん、久しぶりやなぁ」
聞き覚えのある関西なまりの話し方。
これは…
「アンタは…藤村…」
「藤村なんてヨソヨソしゅう言わんでええやん。シゲって呼んでやvv」
「…アンタなんでこんなところに居るのさ?」
「居たらいけんのかいな。つっけんどんやなぁ」
「…翼君?」
「!?無事だったんだね」
「?って飛葉中のマネージャーだった娘かいな?」
「そうだけど?」
「ほーさよか!そりゃあラッキーやったわv愛しのちゃんに会えるなんてな」
「いっ愛しの////!?」
「…で?(怒)なんでお前、ここに居るんだよ?」
「そんなことで怒らんでええやろ〜(汗)別に答えは単純やで。俺、職業が"旅商人"やからな」
「旅商人…?」
「そや」
「此処は神がいる山だろ?旅商人にとってなんか面白いことでもあるわけ?」
「神?ここには神なんかおらへんで?ここにおるのは魔物どもやって。
そういや噂によるとホンモンの神さんは魔物に囚われとるっちゅー話を聞いたなぁ。
ま、俺には関係あらへんけど。俺が興味あるのはその魔物共が使ってる『鏡』や。これが金になるんや」
「鏡?」
「そや。その鏡っちゅうんが、人の魂を吸い取る能力を持ってるらしくてな、人の魂を吸い込むほど黒くなるらしいんや。
黒くなればなるほど高い価値がつくんやで。ざっと1億Gぐらいやな」
「なんでそんなことまで僕たちに教えてくれるのさ?僕たちに教えてもアンタには何の利益もないだろ?」
「利益っちゅうよりも、愛しのちゃんに会えた所為かもしれんなぁv」
「は!?いい加減に…」
「イヤ―――――!!!」
今の声!?
間違いない!!
イリアだ!!
「翼君!今の!」
「分かってる!岩の向こうから聞こえたよな!?
一体どうやって進……おい藤村!お前旅商人なんだろ!?なんかいい方法とかないのかよ!?」
「おー怖いなぁ。姫さん、可愛い顔が台無しやで」
「…(ピキッ)」
「ウソやってウソウソ(汗)そんなに怒らんでもええがな」
「ねぇ藤村くん…何か良い方法ないかな?」
「ちゃん、俺のことはシゲちゃんでええってvvまぁ、何があったかよう分からんけど、ええ方法があるで」
「え?」
シゲは笑顔で言うと、すぐそばにある無数の岩を探り始めた。
「…ここらへんやな」
彼は一つの岩の前に立つと、それを力いっぱい押し始めた。
─ガコッ!
一瞬のうちに岩に穴が開き、人一人が通れるほどの通路が表れた。
「すっ凄い!なっなんでこんなこと知って…」
「話は後や。イリアって子が大変なんやろ?急がなアカンで」
ニッコリと微笑んで私を誘導する。
「うっうん…」
「、何もたもたやってんだよ。早くしないと置いていくぞ」
「はっはい!」
なんか翼君…いつもより怖いんですけど…(汗)
私たちが通った通路は数メートルほどしかないもので、私たちはすぐに穴を潜り抜けてしまった。
「…え?もう外?」
辺りは真っ暗。
多分時間的にも今は深夜ぐらいなんだと思う。
夜の冷たさと無垢な砂漠の空間が暗闇の怖さをよりいっそう醸し出している。
「!前!」
「…え!?」
翼の言うとおり、目を凝らしながら前の方を見みる。
すると、そこにはイリアと彼女の身長の二倍はあろうモンスターの姿があった。
彼女はモンスターに胸倉を掴まれた状態で居る。
あれは…確か…
「翼君…あれってインプっていうモンスターだよね?」
「にしてはよく覚えてるね。でも普通のインプよりも少し大きめだな」
「うっうん」
インプって言うのは悪魔系のモンスターのこと。
茶色い体にピエロのマスクのような顔が特徴。
レベルが低いときにはよく出現してたんだけど…最近は見かけなくなっていた。
ってことはそんなにレベルが高いモンスターじゃないってことだと思うんだけど…
ううん。そんなことより…
「イリア!」
私が大きな声で叫ぶとイリアの大きな目が私と翼君を捕らえた。
「近寄らないで!!」
「!?」
「私…汚いから。凄く汚いから…」
「イリア?」
インプに掴まれたまま泣き叫ぶ。
『汚いよなぁお前は』
インプはニヤニヤとイリアの前に顔を向けた。
『コレは誰のミイラか分かるか?イリア』
インプは近くにあった亡骸を掴むと、イリアに見せ付けた。
「……?」
『よーく見てみるんだな。このミイラは誰のものか』
「……も…しかして…」
奴が彼女に見せ付けていたミイラは髪の毛を三つ編みに結っていた。
「もしかして…」
イリアの脳裏に蘇る一人の少女。
「シマ…?」
『ほー…よく分かったなぁ。見殺しにしたくせに』
「シマ…なの?…うそ…でしょ?」
『しらばっくれるつもりか?辺りを見てみろよ!ここら辺に転がっているミイラはみーんなお前が見殺しにした奴等だぞ』
「イヤ…」
『目を見開いて見るんだな』
「イヤァ!!!」
私の所為じゃない…
「お父様。私は覚悟しております。私一人の命で国の子供たちの命が助かるのならば…」
「イリア…」
「だから今日の夜、私は二アスの山へ…」
「イリア!!」
「…え?急にお父様大きな声を出して…」
「お前は行くんじゃない」
「…え?」
「お前には俺の血だけではない。この国…いや、世界でも珍しいと言われる『ネチェレト』の血が流れているんだ。
お前を失うことはこの国にとって…」
「お父様…?』
「イリア…俺はお前に教えたな。何を犠牲にしても自分を大切にしろと…」
「だから…だからといって沢山の命を見殺しにしろと…言うのですか?」
「…」
何も言わずに頷いた父の姿を見た瞬間…私の中で何かが壊れた音がした。
日に日にいなくなっていく子供たち。
でも皆は優しかった。
誰も私を責めなかった。
それどころか親友のシマは…
「イリア、なぁ〜に落ち込んでるのよ!」
「シマ…だっだって…!」
「私は死ぬことなんて別にどうってことないと思ってるよ?アッラー様に導かれたのならば仕方がないことでしょ?
そのために死ねるなんてステキなことじゃない」
シマの肩は震えていた。
それでもシマは私を勇気付けようとしてくれた。
「だから、イリア泣かないでね。私ね、イリアのこと凄く好きだよ。凄く大切な親友って思ってる」
「私も…シマのこと…親友って思ってるよ?」
「知ってるわよ。それぐらい!ねぇイリア」
「何?」
「貴方は立派な後継者にならなくちゃいけないわ。ヴェラーニはイリアの手にかかってるんだから!」
「シマ…」
最後までシマは笑ってた。
私を悲しませないように笑ってた。
なのに私は…
『お前は自分が可愛い』
「違う!!」
『お前は一人生き残りたかったのだろう?』
「違う!!」
やめて…これ以上私を…責めないで…