「……」
目を開くと、そこは真っ暗な部屋だった。
ん?なんだか窮屈…
足や手に縄がくくりつけられてる…??
「…なん…で?」





「やっと目を覚ましたみたいだね。
「つっ翼君!」
横には翼君の姿が…
けど…柾輝の姿は見えない。
「これ…どういうこと?」
「まだ分かんないわけ。僕たちはイリアに騙されたんだよ」
「…え?」
「イリアにまんまとやられたよ…」
「まんまと…やられた?」
チッと舌打ちをしながら翼は呟く。
その瞬間、前の方からひたひたと誰かが歩いてくる音が聞こえた。
手に持たれた蝋燭の火で、ようやくその姿が確認できる。






「…イリア」






「しょうがないのですよ…」
涙を流しながら、ガタガタと手を震わせている。
「しょうがない…って…?」
「もう子供はいないのです…。ヴェラーニには…38人の子供しかいないのです…」
「だから僕とを生贄にってこと?」
イリアは何も言わずにコクンと頷く。
その姿に、翼はフゥッとため息を漏らした。
「…あのさ、話は変わるけど、柾輝って何処にいんの?」
「え?…あっあぁ彼ならまだ眠っています…」
「柾輝もこうやって生贄に差す出すわけ?」
「…いいえ…彼は…体調が戻ったらきちんと…」
「生贄の数は足りたからもう用なしって?」
―――っ!!」
翼の容赦ない言葉に、イリアは言葉を失った。
そして、さっきよりも大粒の涙をこぼしながらコクンと頷く。
「…あのさ、アッラーって言う神が言い出したんだよね?生贄を出せって」
「…え?はっはい」
「ふーん…なんかクサイね」
「クサい!?」
「いや、のことじゃないって(汗)」
「…どういう…ことですか?」
「神が生贄…ね。それは何か怪しい気がするんだよね。ねぇ、どうせ僕たち今からアッラーのところに連れて行かれるんだろ?だったらさこの縄解いてくんない?」
「…え?」
「別に逃げるわけじゃないからさ。柾輝を助けてくれた恩、返してあげるよ」
「翼君?」
目をパチクリさせる翼。
「怪しいんだよね。それって何か裏がある気がしてさ」
「それってやっぱり私も一緒に行くんだよね…?(にっこり)」
「当たり前だろ(ニッコリ)」
「…う゛…」
「ってことでさ、この縄解いてよ。要は太陽が昇ればいいんだろ?お望みの通りにしてやるからさ」
「……」
「何か不満とかあるわけ?」
「いえ…そうではなくて…」
「ならいいだろ。ほら、縄解けよ」
イリアは何も言わずに翼と私に縛り付けられていた縄を解き始めた。








「…ふぅ。やっとこれで身軽になった」
「…あの」
「何?」
「…私も連れて行ってください!お願いします!」
「…は?」
「お願いします!!」
「…別にいいけど…足手まといならだけで十分だからね、アンタまで足手まといになるなよ?」
―――はい!」
「…」
は言葉を失った。
こんなイリアの顔…出会ってから見たことがなかった。
なんだか…とっても決意に満ちてるって感じ。
一体…イリアとアッラーの間に何があるの?









「で、何処にあるのさ?生贄の場所って」
「あっはい。この城の北西に位置する『二アス山』のふもとです」
「北西?」
「そうなんです。通常、太陽は東から昇りますが、アッラーの神が与えてくれる太陽は西から昇ります」








西から昇る太陽。
一つではない二つの太陽。
地図に無い国。









なんて不思議なゲームなんだろう。
な〜んて、改めて思っちゃうよ。









「ほら、おいてくぞ」
「あっうん!」
ボーッとしてた私の腕を翼君がクイッと引っ張ってリードしてくれた。
こういうときの翼君にはちょっとだけ胸がときめくよ。
なんて今思うなんてスゴク非常識なんだけどね(苦笑)



















「この山です」
約1時間歩いた頃だろうか…私たちは何の障害もなく二アス山に到着した。
「なんかスムーズに着いたね。モンスターにも会わなかったし…」
「アッラーの神が居る二アス山の付近にはモンスターが出ないんです」
「へぇ…」
さっきから気づいてるのかな?
イリアったらアッラーの話をしているとき、スゴク嬉しそうな顔をしてる。
本当はアッラーに対して凄く感謝とかしてるんだろうなぁ。










「もう少しで着きますよ」
「ねぇイリア、この辺りって真っ暗だけど、どうやって歩いていくんだよ?」
「…あぁ、私の指差すほうを見ていてください」
「え?」
イリアは何も言わずに目の前を指差して見せた。
すると、真っ暗な闇の中に一筋の輝く道が見えた。
「これがアッラーへと続く道です」
彼女の言葉に、一瞬翼の顔が強張った。
「これを進めば…」







と、進もうとしたその瞬間だった―――










お前らは何者だ?






頭上から気味の悪い声が聞こえてきた。
すぐさま上を見てみるが、何も無い。




「何者って、アンタから見たらどう見える?」
翼君…どうしてこんなときまで挑戦的な口調なんだろう…(涙)







どう見ても侵入者だな!!
と、強い声で叫ばれた瞬間だった。
私たちの立っていた足場が急になくなったかと思うと、私たちはまっ逆さまに穴の中へ――






えぇえ―――――!!!!?






訳が分からず叫ぶ
が、彼女の叫び声も空しく、その声は穴の中へと消えていった。


























「……」
頭が痛い。
足が痛い。
体がジンジンする〜〜(涙)







薄っすらと目を開けると、そこは闇だった。
手の感触から当たりにはゴツゴツと硬い岩があるのが分かる。
上を見上げると先ほど居たであろう場所から少しばかりの光が漏れていた。
「私たちあんな高い場所から落ちたの…??(汗)…って翼君は??」
辺りを見渡しても人のいる気配がないどころか、真っ暗で何も見えない。










少しだけ目が慣れてきたときだった
「アンタは…」
遠くから翼君の声が聞こえてきた。
「つっ―――」
私が彼の名前を叫ぼうとした瞬間、私の声は一人の男の声によってかき消された。








「よう姫さん、久しぶりやなぁ」