初めて彼を見たのは…いつだったかな?
最初はすごく明るくて陽気な人だと思ってた。
けど、ふとした時に見える真剣な表情に、きっとこの人には何かがあるんだと思って。
彼の全てを知りたくなった。
そして、他人に一線を持つ彼に何故か共感して…
他人事とは思えなくなってたのが恋の始まり。



















... ~そして二人は~


















「どないしたんや?ボーッとして」
「え?あ、シゲ」
顔を上げると、そこにはシゲの姿があった。
「なんや?考え事かいな」
「え?」
頭の中には冬ちゃんでいっぱい。
どうすればいいかってことで頭がいっぱいだ。
「…そんなことないよ」
少し強がって言葉を強く言ってみた。
「?」
納得いってないシゲを横目に、顔を下に向ける。





…もしも私がシゲのこと好きだって冬ちゃんに言ったらどうなるかな?





泣くかな?
泣くよね、きっと…
ってかシゲは私のことどう思ってるのかな?
…そういえば前にクラスの子が言ってたなぁ…



―シゲちゃんは結局誰も選ばないんだよ



って…



そうだよね…
結局シゲは最後まで人と壁を作る人だから。
きっと誰も選ばないはず。



そう思った瞬間、胸の中のモヤモヤが少し晴れた気がした。
















ちゃん!」



教室のドア付近から声が上がる。
「…?」
私は急いでドアの方を見てみた。
「あれ?冬ちゃんどうしたの?」
「…えっと…」



あ…そっか。
彼女は会いに来たんだ。シゲに。
こんな10分しかない休み時間を彼のために使う。
恋する女の子のパワーは改めて偉大だと思う。
そして、そんな純粋な冬ちゃんの行動を羨ましいと思った…



「シゲ?」
「あ、うん…少しでも顔が見たくて…」
「そっか…シゲなら今…あ、水野君の所にいるよ」
「え?」
ひょいっと教室の奥まで顔を覗かせてキョロキョロと見渡す。
傍からみれば何をやってるんだか…って光景だと思う。
でもそんな彼女の姿が可愛くて、は少し嫉妬にも似た感情に押しつぶされそうになった。



「あ…いた」
「ね」
「…やっぱりかっこいいねぇ…」
「…そう?」



冬留と同じく、もまた視線をシゲに持っていった。



「…あ」
一瞬、シゲと目があった。
それとともに真っ赤になっていく冬留の顔。
「…冬…ちゃん」
「や、どっどうしよう…目が合っちゃった!!」
「…」



どうしてそんなに真っ直で素直なんだろう…
本当。
私とは正反対だね。



はそう思いながら、目を伏せた。





















─キーンコーンカーンコーン









授業終了のチャイムが響きわたる。
今日もまた風紀委員会があるんだったような…
なんでこんなに委員会の日が多いのよ!(ぷんぷん)



と、廊下の先にシゲがいるのを発見した。
今から行かないといけないし、呼びに行かなくちゃ…
そんなことを考えながら思わず早歩きになっていく。
ふと顔を上げると。
そこにはシゲと、顔を真っ赤にしながら話す女の子の姿があった。
それは…紛れもない親友の姿。



「…」



思わず立ち止まって、表情が固まる。



いつの間に二人は話すようになったのかなとか。
少し仲良く見えるのは気のせいかな…とか。
そんなことばかりが頭を過ぎるんだって…思ってたのに…



嫉妬よりも先に、頭に浮かんだのはこの言葉







―冬ちゃんには幸せになってもらいたい―







シゲは会話が終わると、こちらに気がついたようで少しポケットに手を入れたままこちらに小走りでやってきた。



「今から委員会やろ?」
「あ…うん」
「今あんさんの親友に会ったで」
「…へ、へぇ」
「なんかとは正反対な性格やな」
「まぁね。よく言われる」
「どないしたんや?」
「え?」
「いつもより元気がないやん」
「そっそうかな…」
はパッと顔をそむけた。
「…ねぇシゲ」
「なんや?」
「…あのさ、あんたのことだから冬ちゃんの気持ちに気付いてるんでしょ?」
「え?」
「冬ちゃんの親友として言っておくけど…冬ちゃんを泣かせたら絶対に許さないからね」
「…」



いつもはポーカーフェイスのシゲの顔が一瞬止まった気がした。



「さよか」
「…うん」



これが私の選んだ道。
どうせ誰のものにもならないのならぱ…
なんて、そんな勝手なことを考えちゃった私の答え。



「だってすごくいい子じゃない。明るいし、すごく素直だし、感情をそのまま出す子だし…」
「そうやな」
「…私とは正反対の子…だし」
「…」



シゲは何も言わなかった。
何も言わずにただ私より先を歩いていって教室の中に入ってしまった。





















それから何も変わらずに数日がたった。



冬ちゃんは相変わらず休み時間にうちのクラスに来て、チャンスをうかがってはシゲに話し掛けてる。
シゲもシゲで冬ちゃんが教室に来ると、近寄ってきてた。
どんどん二人が仲良くなってるって見ただけで分かるぐらい。



胸が…痛い。



「ねぇ…」
「…」
「ねぇちゃんってば!」
「あ、なっ何!?」
「どうしたのボーッとして」
「あっううん。なんでもないよ」
「今…聞いてなかったでしょ?」
「…え?」
「やっぱり…」
「ごめんってば!で、何?」
「実は…ね」
「ん?」



「昨日…シゲに告白したんだけどね。オッケーもらえたんだぁ!!」



「…え?」



その時初めて分かった。
私はきっと心のどこかで『冬ちゃんはフラれる』と思ってたんだって。



「どうしたのちゃん?」
「え?」
「元気がないように見える…けど」



彼女の前じゃ笑ってないと。
そう思うと、心と体のバランスが取れなくなるぐらい辛くなったけど、仕方がないと思った。



だってこれは全て自分の蒔いた種。