COMPLEX LOVER
6年前
「え!?ロンドン!?」
楽しいはずの食卓に、普段聞きなれない言葉が飛び交った。
「そうなのよ。お父さん2年半ぐらい海外赴任になるからお母さんもついていくことになって」
「ちょっと待ってよ!私は嫌だよ。今更外国なんて」
「やっぱりそうよね?そういうと思って、は東京の椎名のおじさん家に高校まで預かってもらうことになったから」
「………はぁ?」
「東京に住めるなんてなんて羨ましいのかしら。ったら羨ましいわー」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
私の意見などお構い無しに、私は椎名家に預かってもらうことになった。
翼とは小学校を卒業して以来あってない。
昔から可愛かった翼のことだ。
磨きをかけて可愛くなってるに決まってる。
小さな頃から親族が集まると、みんな翼や玲お姉ちゃんのことばっかり可愛いとか綺麗だとかいって。
おじさんたちは私を見ると、「大きくなったねぇー」しか言わなかった。
別に期待してたわけじゃなかったけど。
あれ、結構辛かったんだよね。
誰にも言ったことないけど(というかいえないけど)
新幹線で東京へ向かう途中。
なんかどんどん逃げ出したくなってきた。
てか東京人多すぎなんだよ…。
広島、割と都会と思ってたんだけどな…(汗)
駅のホームでげんなりと冴えない顔をしていると。
「相変わらず垢抜けない顔してるね」
「…は?」
今のは私のこと…?
怪訝そうな顔で振り返る。
「…げ。翼?」
「久しぶりだね。っていうか、今の“げっ”ってなんだよ?」
「べっつにー。へぇー。相変わらず可愛い顔してるのね」
「お前…久々の一声がそれかよ」
「翼も人のこと言えないでしょ。それ、思春期の子に言うべき言葉じゃないよ」
別に垢抜けない顔っていうのは当たってないわけじゃないし。
「はは。は相変わらずだね。安心したよ」
「はぁ?安心?なぜに??」
「変に色気づいてなくてよかったってことだよ」
「意味わかんないんですけどー」
相変わらずの毒舌と俺様翼だったことはある意味落ち着けた。
それにしても。
色は白いし目つげなんて長いしクルンクルンだし(ビューラー使ってるのか…?)
コイツ本当に男か?
「翼さ、私が風呂覗いたら怒る?」
「ていうか、意味わかんないんだけど(怒)」
そんなこんなで早速次の日、私は飛葉中へ転入した。
「親が海外赴任したんで、現在従兄弟の家でお世話になってます。広島からきました。です。よろしくお願いします」
早口で淡々といいながら頭を下げた。
すると、一人の女の子が手をあげた。
それに気づいた先生が、「どうしたの?高野さん」とたずねる。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「…?」
私が頭を少し傾げると、彼女は小さく咳払いをした。
その子は肩ぐらいまで髪の毛のある可愛い子で。
私は一瞬、可愛いなーっと見とれてしまった。
「あのね、さんの従兄弟って椎名先輩のこと?」
「え?そうだけど?」
私がそういった瞬間、クラスが「わー!」と大きな声を上げた。
な、なんだ?これ。
翼の奴、すごい人気があるんだな…(男女問わず)
クラスの人たちは顔を見合わせ、驚きの言葉を交わしてる。
でも中には聞き逃せない声も。
「げ。ブスじゃん。椎名先輩のいとこっていうからすごい綺麗な子期待してたのに」
…。ま、言われる気はしてたけどね。
ポリッと頭をかきながら、先生に言う。
「あのー。私の席ってドコですか?」
正直クラスメイトの反応なんてどうでもいいよ。
こういう風に言われるの、結構想定内だったし。
そりゃムカツクけどな(けっ
「ああ。じゃあ黒川君の隣に座って」
「黒川君?」
って、誰だよ…
しかめっ面をしながら前を向くと、後ろの人が手を挙げている。
多分彼が黒川君って人なんだろう。
てか、色黒い人だな。
ちょっと怖そう…。
まだざわつくクラスを抜け、私は席にたどり着いた。
「ありがと。手を挙げてくれたおかげで場所がよく分かったよ」
ペコリと頭を軽く下げ、言葉を続ける。
「中学卒業するまでだけど宜しく」
そういい手を差し出すと、彼は上げてた手を下げ、ゆっくりと私の手と絡ませた。
「ああ、よろしくな」
「ええ、よろしく」
そういってお互い少しだけ微笑んだ。
席につき、ふと目を下にやる。
すると、彼の机の下にはサッカーボールが置いてあった。
「…サッカー部?」
「ああ」
「じゃあ翼と一緒なんだ」
「まぁな」
「へー」
「サッカー好きなのか?」
「まぁ、そこそこ。ルールはあんまり知らないけどリフティングならできる、と思う(にや)」
「思うって…」
彼はそういいかけると、手を口にあてた。
「ん?」
みると、彼は声を殺して笑っている。
「黒川君…ごめんよ。私はあんたのことギャングで怖い人だと思ってたけど勘違いだったのね」
「ギャングって…俺のイメージってどんなのだよ?笑」
「え。色黒いからギャングかな、と」
「これ、地なんだけど」
「え!?あ、ゴ、ゴ、ゴメン!」
「別に謝ることねーよ。もう慣れてるし」
「いやいやいや」
慣れててもやっぱり容姿のことって言われるの嫌だよ。
慣れたっていっても私はやっぱり嫌だもの。
その雰囲気を察したのか、黒川は「あー…」と口を開いた。
「は翼に似てねーな」
「…よく言われる」
「顔じゃなくて性格が。あいつならこんなことで気にしねーでズバズバ言うからな」
「確かに。てかあんな毒舌に似てたまるか!!汗」
「あと、君ってつけないでくれよ」
「え?」
「黒川君ってガラじゃねーだろ、俺」
そういうと、彼は少し苦笑いした。
「うむ。じゃあ黒川で。私もでいいよ」
「てかもう呼んでるけどな」
「確かに」
そういうと、また二人は軽く微笑んだ。
「えー。この働きが電解質で…」
授業はこっちのほうが少しのんびりペースだったから助かった。
なんとか授業は遅れずにすみそうだ。
─キーンコーンカーンコーン
昼休みのチャイムが鳴り響く。
おお、お待ちかねの昼ごはんか。
てか…ご飯誰と食べればいいんだ…?
チラリと周囲を見渡すと、周りは早くも机を引っ付けたり教室から出て行ったりと様々だ。
ど、どうしようよ、これ(汗)
とその瞬間…
「、昼ごはん食べるにいくぞ」
教室の前のドアから翼が声を上げた。
「ちょ、ちょ…!椎名先輩なんですけど!!」
「うっわ!ちょー可愛いvv」
「バーカ!かっこいいの間違いでしょ!!」
翼の登場に、クラス内にいた女子が一気に声を上げる。
う、わ。すっげー近づきにくいんですけど。
「…」
私は無言で横に首を激しく振った。
それに気づく翼。
「へぇー。僕の誘いを断るわけ?ま、いいけど。でもお前弁当持ってんの?僕が持ってるコレ、なんだかわかるよね?」
「へ?」
そういえば、私弁当を鞄に入れた記憶がありません!!滝汗
翼の奴、弁当箱が入ってると思われる袋を持ち上げて意地悪く笑ってやがる。
仕方なく立ち上がった瞬間、クラスのほとんどの女子が冷たい目でこっちを見た。
うわ、すっげー怖いんだけど。
「俺も翼と毎日食ってっから、一緒に出ようぜ」
黒川がポンッと私の背中を軽く叩いた。
「あ、お、おう」
そういい彼について歩き始める。
教室から出ると、翼は私のおでこに勢いよくツッコミをいれた。
「弁当忘れるなよ。バカ」
「バカってなにさ。一緒に行ったんだから翼こそ教えろっての!」
「なに?僕に口答えする気?」
「…けっ。世界が貴様中心に廻ってると思ったらとんだ勘違いだ」
「…?(ニッコリ)」
「…さて、昼ごはんはドコで食べるのかな(えーと)」
目をそらして黒川に尋ねる。
「いつもは屋上だぜ」
「へー。そうか」
そういいながら3人で屋上へ向かった。
「でも翼にああいう態度できるのだけだぜ」
大きな口にご飯を入れながら黒川がいった。
「まぁ、それが他人なら言わないけど翼は従兄弟だしねぇ。逆に気を遣うほうがキモくない?」
「まー、確かにそうだな」
「でしょ?」
てかオバチャンの作る弁当激ウマだわ。
「ま、翼のファンは過激な奴が多いから気をつけろよ」
「へ?」
「マサキ。に変なこと吹き込むのやめろよな」
「ホントのことだろ?」
「気をつけろっていわれてもなぁ」
どう気をつけろというんだか…。
「そういや、黒川。あんたサッカーボール持ってきたんだ」
「ああ。さっきリフティングの話になったろ?」
「え?うん」
「のリフティングの実力を見せてもらおうと思ってな」
「…ゲ!さっきいったじゃん。できる気がするだけだって!(汗)」
「気がするんだろ?やってみろよ」
「…このやろう…」
お弁当箱を閉じて、仕方なくボールに触れる。
リフティングってさ、簡単そうじゃん。
一回蹴って、で…。
「…ありゃ?」
ボールさん。あんたなんで前のほうにいっちゃうかな…汗
は小走りでボールを拾いにいく。
「もっと軽く蹴ったほうがいいのか…?」
独り言を言いながらもう一度トライ。
─ドコッ
ぎゃ。またボールが向こうにいきやがった。
意外と難しいじゃないか、リフティング…
「貸してみろよ」
「え?」
掴んだボールを簡単に黒川に取られる。
彼はボールを足に当てると、
─トンッ…テンッ……
器用に足、肩、頭、胸に載せていく。
「…す、すご!!!」
大興奮でそれをみつめる。
その様子を、翼は冷たい目で見つめていた。
「ほらよ」
軽くボールを蹴り上げる。
─ポスッ
まるでボールに意志があるみたいにまっすぐ私の元にボールがやってきて、見事、ボールは私の手によってキャッチされた。
「…う、うぉ!!すごいね黒川!やるねー!」
「のもすごかったぜ」
「ん?それはなんだ?嫌味か?」
アハハ、とまた笑って。
黒川に話しかけようとした、そのとき。
「もう昼休みは終わりだからさっさと片付けなよ」
言いかけた言葉は、翼の強い言葉によって阻止されてしまった。
なんか翼怒ってない?
今日なんか少し態度おかしい気がする。
女の子の日なのかな…(酷
「この文章に表れる主人公の思いは…」
…てか、5時間目が国語って…
もう寝てくれってことですか…?(違
チラリと横目で左を見る。
隣の黒川なんて授業開始からずっと寝てるんですけどー。
いい度胸だな…ワイルドボーイ
不良なんだかスポーツ少年なんだか…
でも、ま。
黒川…私はあんたのおかげで少し学校生活が楽しくなりそうだよ。