「もう!前にアメあげたでしょ♪私の名前は相田有里っていうんだよ!」






笠井に話し掛けた人物は、まぎれもなく相ちゃんだった…








「…はあ」
「うふふ。あーでも笠井君に朝から会えて嬉しいなぁ」
「…え?」
「ううん。なんでもない。っで、どうだったの?」
「あっああ。まあまあだった」
「そーなんだぁ。受かってるよ!きっと!私が保証する!あっまたコレあげるね!」
「え?」
「今回はミルキーあげるね」
「…ども」
「前のアメ食べてくれた?」
「…え…?あぁ…うっうん…」
「本当に?うれしーい!じゃっまたね!」
彼女はそう言うと、くるりと振り返り私の前を通り過ぎようとした。










「あっっちおはよう!」
「お、おはよう」
「あ〜今見てたの??」
「…」
私は少し笑ってごまかした。
「手紙書いたよ…」
「え?本当に?」
「…はい」
「うわ〜今読んでいい?」
「えっ…うっうん」





相ちゃんはすぐに手紙を開き始めた。
彼女の顔は一瞬真剣になったかと思うと、上目遣いで私の顔を見て、にっこりと笑う。 
「はぁーっち怒ってなくてよかったぁ」
「あっうん…」
「うん。お互い頑張ろうね!」
「えっあっうん」
彼女の笑顔につられ私も笑う。
「やっぱりバレンタインあげるんでしょ?」
「え?まだ考えてないや」
あっやばっ…ウソついちゃった…。
バレンタインはあげる気なのに…。
「そうなの?私はね、あげるよ!今ね、頑張って練習中なの!」
「へえ…」
「うまくいけばいいんだけどね〜!」
「そっそうだね」
相ちゃんのあまりに嬉しそうに話す顔がとても輝いてたせいで、思わず目をそらす。
「そーいえば、っちって笠井君の隣の席だよね?」
「え?うん」
「うらやましいけど…私はやだな〜。だって緊張しちゃって話せないよ〜!」
「そうかなぁ?」
「そーだよ!普通はね!私はね、同じクラスで席が遠くっていうのがいいな!」
「…」
どうしよう…声が出ない。
相ちゃんは別に嫌味でいってるわけじゃなくて。
だから余計に…余計に苦しいよ。とられたくない!
笠井のことは私のほうがよく知ってるんだ!って小さなプライドが邪魔をする。
「相ちゃんは本当に笠井が好きなんだね」
「うん。大好き!でも笠井君…こういう、うるさい人って苦手かも…お笑いとか嫌いそだよね?(笑)」
「そう?面白いよ、笠井は」




"私のほうが笠井の事を知ってるんだから"




「え?そう?」
「だってアイツの教科書の落書きとかスゴイよ〜。見せてらったけどさ」




"私のほうが笠井の事を知ってるんだから"




「へえ〜そうなんだぁ。だったら見せてもらおっかな?」
「え…?」
「今まだ時間あるよね?ちょっと見せてもらいに行ってくるね!」
そう言って彼女は素早くどこかに行ってしまった。







バカバカ!私のバカ!!
何チャンス与えてるのよ!
変なヤキモチやいっちゃって…
自分って本当にダメだあ〜!
でもさっきの笠井の顔…まんざらでもなかったみたい。
結構ヘラヘラしてたし。
なんか…悲しいって思いよりも腹がたってきた!!
笠井があんな感じで少し微笑んだのを見たのも初めてかも…。




ちょっと…ほんのちょっとだよ…期待してたの。
笠井の女友達って私だけだから、これが恋に変わる可能性は充分あるんじゃないのかって。
でも、話し掛けたら笠井ってホイホイと友達になっていくんじゃ・・・。
あー…腹立ってきた。
なんか…なんか…自分ってミジメ?かも…。
あーもういいや!教室に戻ってみようっと…
いや…ちょっと待て…!今行ったら、笠井と相ちゃんが一緒にいるかも…
耐えられないよ!絶対ムリムリ!!
よし!トイレに行こっと。
は、そう決意するとすぐにその場を立ち去った。










十分位してから教室に入ると、いつもどおりボーっと一人で笠井は席にいた。
少しホッとしてしまう。




私はいつも通り何食わぬ顔で席へと進む。
「おはよう
「…」
「どうかしたの?」
いつも私に見せる顔だ。
相ちゃんの時みたいにヘラヘラしてない。
ムカッ…ムカッ…
やばっまた腹が立ってきた!!
「いーね」
「え?」
「いいねぇモテモテで!」
「…!?」
あっ言っちゃった!
つい言っちゃったよ!
笠井ったら今まで見たことがないくらいビックリしてる。
?何言ってんの?」
「別に!」
「…な」






―ガタンッ





笠井が何か言いかけてるのに私はその場から立ち去った。
なんか腹立つなぁ〜。
相ちゃんにヤキモチ妬いてる自分…
大嫌い!!!









─キーンコーンカーンコーン






チャイムは鳴り響き、私の足は重く、騒がしい3―4へ強制送還された。
視線の先の笠井…。
なんか怒ってるっぽいよ。
あーなんであんなこと言ったんだろう?



―カタン



私は静かに席に着く。
笠井はそれに気づくと私の方を向いて口を開いた。


「さっきの何?ムカツクんだけど…」
え?笠井でもムカツクって言葉使うんだ?
そりゃそうだよね…いきなりあんなこと言われて…
でもね…




「だって…」
「…ん?」
眉間にシワをよせた彼がこっちを見てる。
「だってまだ…まだ好きなんだもん。好きだから嫌なんだよ…」
私は目に涙が浮かんでいるのにも気付かずつぶやいた。 




「バカ…。オレとは友達だろ…」
「うん…分かってるよ」
わかってるよ。うん、友達…。
知ってる。知ってるよ!
あなたの気持ち知ってる。
相ちゃんにはチャンスが溢れてるって。
でも…でも、とられたくない…



「友達…」
「うん。友達」
「うん…」
私は二回も告白して…フラれてて…
もう友達以上に見られてないって知ってる。
可能性は0。友達って言葉…。
一度目の告白の時は"友達"っていってくれて嬉しかったのに…
二度目の告白の時は"もう友達にしか…見られない?"って感じ。
でも…相ちゃんと笠井がひっついていくのは絶対に耐えられない!
もう言わないから…態度にも出さないから。だから…








あなたを好きでもいいですか?