「いってきまーす」


7時40分にいつもどおり透子が迎えに来て、いつものように朝はバタバタで。
昨日とは何一つ変わらない朝が始まった。
ただ一つ違うのは、





「え!?告ったの!!?」
そう、驚く透子を除いては…(汗)







「うん。フラれちゃったよ〜」
「ってなんでそんなに普通なのよ(汗)」
「まぁフラれたって言っても向こうは私のことを友達って思ってくれてるみたいだし…
まぁ好きになって間もなかったしね、それなら友達のままでいいかなぁ…なんて思って」
「…」
「ん?何か言ってよ」
「…はぁ。ってことはまだは笠井のことが好きなんだね」
「…はい!?そっそんなわけ…」
「友達友達ってね、絶対にそれ以上を求めちゃうって!これ、命かけてもいいよ!」
「…そんな…命をかけるだなんて…(汗)」
でも…実のところ、透子の言ってることは外れじゃない気がする。
昨日涙が一粒も出なかったのはその所為って気もするし。




―友達と恋人の違い―




昨日ずっと考えてたんだもんね。
やっぱり未練たらしいなぁ…自分。





難しい顔をして歩いていると、すぐ足元には学校が立ちはだかっている。
…もう学校ッスか…?
……やばい。
妙に緊張してきたんですけど…




「……」



今まで教室に入るのをこれほどまでにためらったことはないんじゃないかっていうぐらい
ドキドキしながらドアに手をかける。





─ガラッ




すっと息を吸って席へ向かう。
"おはよう"ってちゃんと言うぞ!
…大丈夫だよね?


でも…でもちょっと待って…?
もしも…うん、もしも…向こうが私を避けてたら?



そう思った瞬間、急に足が重くなった。
もし無視されたら?
言った後に、『昨日フッたのに、なにコイツ?』とか思われたら…どうしよう…?




胸に強烈な痛みが走る。
やっぱり言うの…やめようかな?
うん…やめよう。
恐い…恐いよ。
彼の反応を見るのが怖い…






私は重い足を動かし、自分の席へと向かった。
笠井は一人でボーッと窓の外を見てる。
こんなに私と笠井の席って近かったっけ?
そんな疑問を抱えながら、私が席に着こうとした瞬間…
彼は私の足音に気がついたのか、ゆっくりと顔を上げた。




「――!」



思わず顔が固まった私に彼は…
「おはよう、」と、優しくささやいた。




…うそ。向こうから言ってくれた。
「…あ、お、はよう」
は戸惑いながら途切れ途切れに言葉を発すると席についた。



彼が元の位置に視線を戻すと、私の目には涙が浮かんだ。
ホッとした感情と、恋愛に似た感情が入り混じる。
そして私の涙腺に響いた。
私、笠井が好きだぁ…。
でも…友達…だもんね…






自分の心にセーブをかけると、ますます目頭が熱くなった。