「え?笠井と話したの?」
「うん。って言うかさ、本当の本当に笠井の教科書面白いんだよ!
なんか最初は藤代とどっちが面白いか競い合ってたんだって!意外に子供だよね」
「ふ〜ん」
「あとさ、漢字テストの答えを埋めてもらったところね、結局は間違ってたんだけど、
でもなんていうかな?その心遣いがすごくいいと思わない!?」
「ふ〜ん」
「でねっ!」
「って言うかさ、…もしかして笠井にほれた?」
「…え?」
「だってったら、笠井の話しするときスゴく嬉しそうに言うんだもん」
「…えぇ!?」
「あれ?やっぱり自覚なかったんだ」
「…(汗)」
「でもさ、笠井も唯一女子の中でにだけ心を許してるっぽいっしさ、
向こうもに気があるんじゃないの?」
「え?」
「だって女子の中で笠井の笑った顔を見たことあるのは、多分だけだと思うよ」
「そっかなぁ…」
別に透子に言われたからってわけじゃないんだけど、
私と笠井はあの漢字テスト以来結構仲がいいと思う。
実際最近はこんな会話が日常だし。
「おはよー笠井!」
「おはよう」
「ねぇねぇ笠井ってサッカー以外で得意なことってないの?」
「んーなんだろ…ピアノとか?」
「え!?意外!」
「まぁ男だし…ね」
「いや、そういうことじゃなくってさ、私音符も読めないのよ。だから尊敬って意味で!」
「そりゃどうも(笑)」
…とか。
なんか自分で言うのもあれだけど少しずつ心とか許してくれてる気がするんだよね!
透子には「惚れた?」とか言われるけど、私は別にまだ「好き」って感情はない。
ただ話したときは嬉しくなったりするけど。
けどこれは恋じゃない気がするし。
まぁあと二ヶ月ちょっとで卒業なわけでしょ?
そんな制限つきの恋に踏み込むなんて悲しいだけじゃない?
だから…って…ん?
そういえば笠井の志望校ってどこなんだろう??
……
あ゛――――!!気になってきたぁ!
「ねぇ笠井」
「ん?」
「あんたって進学先はどこなの?」
「え?」
「いや、ちょっと気になってね」
「あ〜とりあえず俺はこのまま武蔵森の高等部に進めれればいいかなって思ってるよ」
「へぇ…ってことは来月の推薦受けるの?」
「うん。とりあえずね」
「そっか」
「で、はどこを希望してんの?」
「え?私?私は一般だから三月だよ」
「いや、そうじゃなくて、志望校」
「あぁそういうことね(恥)私はとりあえず桜女子かな?」
「そっか」
「高校別々だねぇ」
「まあお互い受かればの話だけどな」
「あはは。大丈夫、笠井なら受かるべ」
「ありがと。多分も大丈夫と思うけどね」
「ありがとvv(…多分…?)」
二人で話していると、それを遮るようにプリントが回ってきた。
「なにこれ?」
半ば独り言のように呟いて、プリントを目に通す。
"3年4組のアンケート用紙!卒業の冊子に載せるので必ず書くこと!"
心がズキンと音を立てた。
あと二ヶ月もすれば卒業。
笠井と私の高校は別々
分かってたけどショックだなぁ。
やっと仲良くなれたっていうのに。
私は切ない気持ちを抑えプリントに書き込んでいった。
@クラスでかっこいい人、かわいい人は?
A気軽に話せる人は?
B怒ると怖い人は?
C休日、家にいつもいそうな人は?
まだまだあるな。
先は長いよ(ハァ)
えっとDは…?
Dあなたの好きな人は誰ですか?(卒業だし必ず書いてください!)
私の好きな…人?
その瞬間…
私の頭の中には…
艶のある黒髪に…
キリッとあがった猫目の…
一人の少年の姿が浮かんだ。
笠井…?
―え!?
ちょっと待て待て待て!!
私…やっぱり…笠井のことが好きなのかな??
好き?
彼の新しい発見をすると嬉しい。
彼と話すと楽しい。
彼のことをもっと知りたい。
彼ともっと仲良くなりたい。
「…」
私はチラリと横目で隣を見た。
すると、そこには真剣に書き加えていく笠井の姿。
私、この人のことが好きなのかもしれない。
ううん。
きっと好きなんだ…
そう思った瞬間、私はDの欄に『笠井』と書きこんだ。