どうしていつも貴方は私を"友達"って言うんですか?






―友達がいい



―友達だろ?




友達


友達


友達






友達としてしか見られないんだったら…



「友達なんて…フるんだったら思い切りフって!お願い!」
「え?」
「もういやなの!!友達って言葉で振られるのは…」
「……」







沈黙を破った笠井の言葉はひどく胸に焼きついた。
が友達以上になることは…この先…無い…」







―ズキッ








痛みが全身に走る。
フラれるって知ってたじゃない?
もう覚悟してたんでしょ?
「うん…うん…もう…ちゃんと…ちゃんと諦めるから…」
「…」
また沈黙が走る。
「あっでもこれは受け取って?」
「え?」
私はチョコを手渡した。
「バレンタインだし…せっかく作ったんだもん。」
「ああ、ありがと…」
少し困ってる顔。
そんな彼の顔を見るたびに胸が痛くなる。
私、そんな顔が見たくて渡したんじゃないよ…?
「うん。じゃあね」















三回目の失恋。
もうしょうがない。
しょうがないよ。
これしか言葉が浮かばない。
バレンタインデー。
相ちゃんはもう渡した…よね?
OKしたのかな?
ううん。もう考えるのはよそう。
もう笠井の困った顔は見たくないよ…







でも…
考えるのをやめようとすればする程…



笠井の笑った顔
怒った顔
テレてる顔を思い出す。







─ポトッ


あれ…?雨?降ってたっけ?




暖かい何かが頬を伝う。




あ…私の涙だったんだ…。
あれ…?あれ…あれれ…涙がこぼれるよ…
止められない…
「くぅ…ひっくひっくひっく…」
もうフラれたんだから!
!フラれたんだから。
諦めなきゃ。


諦められるの?
本当に…本当に諦められるの?
笠井への好きって気持ちも…
なくすこと出来るのかなぁ?











私は走り出した。
早くこの涙が止まるように。
早くこの想いが消えるように。
たどり着く場所もなく走り続ける。






「うわぁーーーー……」
耐え切れなくなった私はその場にしゃがみこんだ。
一体どれだけ走っただろう?
それでも涙は止まらない。






―フラれるって知ってたのに…
―実らないって知ってたのに…






今さら友達?





戻れるわけないよっ!
こんなに胸は苦しくて…
あなたのことを、まだこんなに好きなのに…
こんなに苦しいんだったら…
笠井と出会わなければよかった。
友達って…重いよ。
「ひっく…ひっく…」
止まらない思考の回転。
過ぎていく時間。
一人暗闇の中に立ち竦む。










明日、平気な顔なんて絶対できない!
もう…


―笠井とは話さない!
―笠井の顔も見ない!





友達なんてもう無理だよ…
こんなに好きなんだもん。
今更友達として見ることなんてできないよ…









本当だったら…私の予定だったら…
フラれて…そして前みたいに友達に戻るつもりだった。
でも無理だよ…












結局涙は夜になっても止まらなかった。































―朝がやってきた







太陽の日差しが眩しくて目につきささる。
朝だ、学校に行かなきゃ。
行きたくないよ…
でも行かなきゃ…
透子も来ちゃうし…
ハァ…
今までの失恋と比べものにならないくらいきついなぁ〜。
笠井の顔、見たくない。
忘れなきゃいけないもんね。
ハァ…
ため息ばっかり。







今、一番会いたくないのは、
笠井と相ちゃん!!
なんか逃げ腰な自分。
やだな…でもしょうがない。
うん。しょうがないよ…
だって失恋した身だし…





















「おはよー!」
「おはよ」
じっと見つめる透子。
思わずビクッとする私。
「え?なっ何…?」
…昨日泣いたでしょ?」
「なっなんで?」
「微妙に…目…腫れてる」
「うっうそ!やだ!目立つ!?」
「ううん。多分私くらいしか気付かないと思う…」
「そっか…」
「…」







……



「あのさ…透子…」
「ん?」
「昨日…ね…」
「う…うん」
私が何を言うか分かったのか、透子は真剣な顔をした。
「フラれちゃったよ」
精一杯の笑顔で私は彼女に言った。
…無理しなくていいよ」
「え?」
「我慢しなくていいよ」
「…っ」
どうしよう…また涙出そう…
「ううん。大丈夫!」
「…ホントに?」
「もう…もう泣かないって決めたから…」
笠井のことは諦めるんだから…!
今泣いたら確実に学校で笠井は私が泣いたって気付くはず。
困らせたくないもん…
「そっか…」
「うん」











私が笑うと、透子の方が泣きそうな顔になっていた。