バレンタインまであと一日。
そう!とうとう明日はバレンタイン!
はぁ〜こんなに緊張してる二月十四日は初めてかも…
フラれてるって知ってるけど。
もう無理だって知ってるけど。
あげたいんだ。
だって志望校も違うし…
卒業したら会うこともなくなるし…
会えない…分かってるよ。
だから今はありったけの思いを伝えたい。
作るものはね、チョコサンドクッキー!
明日のために一生懸命作ってるんだけど。
なんかイマイチ…。
クッキーはパサパサ…
チョコクリームは激甘…
うーん。やばいかな?
ううん。心よ心!気持ちがたくさん入ってるもん!
茶色の紙袋にピンクと水色の二色を合わせたリボンで可愛くラッピング。
よし!これでOK!
これをあげたらもう忘れよう…。
この恋って言う気持ちを全部。
それが私と笠井が友達でいられるいい方法。



どこで渡そうかな?
家…に行ったらやばいかな??
ちゃんと目を見て思いを告げたいんだけど。
だって一度目も二度目も、な〜んか中途半端。
三度目はね……うん、ちゃんと言うの!


























「笠井〜」
「ん?」
普通を装って隣を見る私。
心は爆発寸前!
ドキドキする〜
「あのね、今日渡したい物があるから松葉寮に行ってもいい?」
「…え?」
「…ダメ?」
「…別にいいけど」
「だったら…家に帰ってすぐ…」
「四時半ごろ?」
「あっうん。それくらい!」
「ん、分かった」
「うん。」
「…」
会話が終わった後…なんか妙な静けさ…。
笠井…どう思ってるのかな?
でも、自惚れちゃダメだよね。
向こうは友達としか思ってないんだから。




















「サヨーナラー」





─ガタッガタッ



椅子の音と共に生徒たちが教室からいなくなる。
でも…やっぱりバレンタインのせいか女子はチラホラ残ってるみたい。
これが最後のチャンス。
皆、思ってることは同じだね。










帰ろう!」
「えっあっうん」
透子は……相ちゃんの事を全然言わない。
やっぱり知ってるよね?
相ちゃんがチョコをあげるかどうか…
私は私。相ちゃんは相ちゃん!
って事で相ちゃんのことを考えるのをやめようと思ったんだけど。
………。
やっぱり気になるよ〜〜〜!!
もうあげたのかな?
いや…それはナイと思う…。
今日は笠井、席を一分たりとも動いてなかったし…。








「ねえちょっと早歩きして帰ろ?」
「えっいいけど別に…」
「そーいえば藤代にチョコあげたの?」
「え!?うっうん…」
「えっうそ!?いつ?」
「今日…休み時間にパッと…」
「うそー!気付かなかった〜!」
「うん。頑張ったもん!隠して渡すの」
「やるじゃーん!」
あの日以来、透子は私に笠井のことをあんまり聞かなくなった。
まぁしょうがないよね…。







「じゃーね」
「うんバイバイ!」




透子と別れた後、私は急いで服を脱ぎ、そして一番お気に入りの服を手にした。
"これで最後だから"そう思うと想いは溢れそうだった。










よし!行こう…!
今は不安とか期待とかそんなものはなくて…本当に緊張してる。
すぅ…はぁ…
深呼吸ばかり…
脈は、松葉寮に近づくにつれて高鳴る。
すると…もう目前に『松葉寮』と書かれた表札が見えた。





「こ…ここだ…」
歯を食いしばり、入口を睨んでしまう。
ひっこんでる手を頑張って前に押し出す。




─ピンポーン






「はい?」
勢いよく『ガチャ』とドアが開き、中からは管理人と思われる中年の男が出てきた。
「あっの…は、ですけど…笠井君は…」
「もしかしてファンの子かな?悪いけどうちは…」




「高橋さん、俺のお客さんですから」
少し低めの声が後ろから響いた。
「笠井…」
男の人の後ろには笠井がたっていた。
「ここじゃあれだし、向こうに行こう?」
「うっうん…」









笠井は私の横に立ち、ゆっくりと前へ進み始めた。
そして、小さな公園にたどりついた。






「……」



沈黙が苦しい…
目の前に笠井がいるのに。
言葉が…うまく言葉が出てこないよ…。



私はスゥーと息を深く吸い込み…じっと笠井の目を見つめた。




「もうダメって知ってるけど、もう一度言わせて…!」
そしては笠井の返答を待たず言葉を続けた。
「好き。もう嫌って言うぐらい好き!隣の席になってから笠井のことをずっと考えちゃってる。あの日から…ずっと好きでした」
「………」
会話が止まる。
笠井の真剣で困ってる顔。





やっと彼が口を開いた。
「オレ…友達としてしか…」







また…友達?