今日から中学生最後の三学期が始まる。
冬の行事っていったらバレンタインとか、卒業式とか…。
でも最大の難関といえば、そう。受験戦争!
まぁ私の志望校はとりあえず今の成績なら受かるところだしあんまり心配してないんだけどね。
冬休みにはクリスマスとか正月とかイベントはあったけど。
好きな人がいない私にはどうでもいいことで(汗)
だから多分バレンタインも卒業式も何もないって思ってる。
「〜!透子ちゃんが迎えに来たわよ」
「はーい。今行く〜」
7時40分。
いつものように親友の透子が迎えに来て私たちは学校へ向かう。
「今日から三学期だねぇ」
私は感情を込めずに呟いた。
その言葉に透子は少しフフッと笑いながら、
「そうだね」
と、笑った。
「新学期ってことはやっぱり席替えとかあるのかなぁ?」
「だよね!はぁ…ドキドキする〜」
「は?なんで?」
「だって…藤代と席が隣になる最後のチャンスなんだもん」
「あ〜。そういうことね」
恋する乙女はかわいいわ。
私は心の中でオッサンのようなことを考えながら透子を見つめた。
「なんでそんなには楽しそうじゃないのよ?」
「だって私好きな人いないし」
「何よ〜。今からでも間に合うじゃん」
「…は?」
「受験生が恋をしちゃいけないって誰が決めたの?今から恋をしても十分間に合うって!」
「いや、別にいいよ(汗)」
透子のキラキラした目をさえぎって私は会話を戻した。
「でも席替えね…別に透子の近くだったらいいや」
「うん。私もの近くだったらいいな」
「…藤代よりも?」
「…そっそれは…(滝汗)」
会話に花が咲いたころ、私たちは学校の門をいつものように通り抜ける。
今年はじめて見る学校は補習で何度か登校してたこともあって、あんまり久々!という感じではない。
「皆さん冬休みは…」
校長先生の話が終わり、始業式が終わった頃。
担任の先生が口を開いた。
「じゃあみんなのお待ちかねの席替えをしようか?」
先生がこの一言を言った瞬間、私のクラス、3年4組はお祭り騒ぎのようになってしまった。
「じゃあどうやって席替えをする?まぁ好きなもの同士って言うのも有だけど、今は大事な時期だからね。クジでいい?」
「「「はーい」」」
みんなの声がそろう。
クジかあ。
クジだったら透子と席が遠くなる可能性が高いよね。
はぁ…別に席替えなんてしなくてもいいのに。
周りの子の顔は期待と不安に満ちているのには一人しらけた顔をしていた。
「はい。さんの番よ」
先生がクジの箱を私の差し出す。
「どうも」
周りの子がドキドキしながらクジを引いているのにもかかわらず、
はいつもとなんら変わらぬ顔で箱に手を伸ばす。
―カサッ
「…27番かぁ」
自分でも聞き取れないほど小さな声で呟く。
その声はすぐに賑わうクラスの中に消えていってしまった。
「じゃあ机を移動させてくださ〜い!」
先生の言葉に一斉に生徒は机を移動し始める。
もまたその渦に紛れながら席を移動させた。
―ガガガ
どうやら私は一番後ろの席みたい。
周りの人は誰なんだろ…?
ってまだみんな移動してないから全然わかんないや。
まぁいっか。
先に座っておこう。
─ガタン
は静かに席についた。
すると、隣の人が席の移動をやめたことに気がついた。
誰なんだろ?
は首を傾けながら振り向くと…
そこには同じクラスになって九ヶ月過ごした中で、まだ一度も話したことのない笠井竹巳が立っていた。
笠井はこちらに気づかずに座り込む。
「…」
うっ…沈黙が痛いぜ。
そっそうだ。
話しかけてみよっと!
もしかしたらノリのいい奴かもしれないし!
「かっ笠井!三学期よろしくね!」
と、少し引き攣り笑いでは隣を振り向いた。
それに気づいた笠井はゆっくりとこちらに振り向き、
「ああ、よろしく」
と、一言静かに呟いた。
…くっ…暗い。
こいつと隣!?
マジで!?
確かに三学期はほとんど自習だからさ、関わることもないかもしれないけどさ。
なんか…ねえ。
コミュニケーションをとろうとか考えてないのかい??
ねぇ笠井君。
どうなのよ?
は一人でムンムンと悩みこんでいた。