「シゲちゃん私のこと好きって言ってくれたのになんで他の人と歩いてたの!?」
嫌だなぁ。
変なところに遭遇しちゃったよ…
まさか今時さ、呼び出すところに校舎裏を使うなって話よ。
校舎裏がゴミ捨て場になってること忘れてるのかね。
それもシゲの奴、モテモテだからなぁ。
しかも調子いいコト言うからこういう子もいるとは思ってたけど…
本当にいるとはね。
「俺、束縛されるんは嫌いなんや」
二ヤッと笑いながら言う彼の姿はいつものシゲとは違う人のように見えた。
「ひっひどい!」
彼女はそう言うとその場から走り出した。
走り去る女の子の背中を見ながらシゲは頬をかいていた。
…今の内に逃げてしまおう。
「なぁ、あんさんいつまでそこに隠れてるつもりや?」
「!!」
しまったぁ!
気づかれてた!
こいつは忍者かよ!?
「別に覗くつもりはなかったんだけど…」
あえてゴミ箱を強調するようにシゲの前に体を出す。
「おっやん。お前も趣味が悪いやっちゃな」
「だから覗いてたわけじゃないってば!」
「ほうか、まっそーゆーことにしといたるわ」
「…ってか、言わせてもらってもいい?」
「なんや?」
「アンタ、サイッテーだね。これはさっきの女の子の気持ちだよ」
そう言いビンタではなくパンチを繰り出す。
─ボコッ
「あ…」
軽くしたつもりなんだけど結構強くなっちゃったかな…(汗)
やばい!と思った私は彼から離れて走り出した。
「あっちょっとま…」
シゲの言葉が聞こえても立ち止まりもせずに。
はー…
ちょっとスッキリしてる。
だって実は今までシゲのことが嫌いだったんだもん。
なんで皆シゲのことが好きなんだろうって疑問だったくらい。
それにクラスも一年のときは一緒だったけど今は違うから文句もそう簡単には言われまい。
そう思いながら私は笑みを浮かべ教室へ入ろうとした。
その瞬間―
「ちょーっと待てや」
ハァッハァッと息切れをしながら私の肩をガシッと掴む。
その声って、つーか関西弁…聞き覚えがあるなぁ…(滝汗)
恐る恐る振り向くとそこには凄い形相のシゲが…!(きっと本誌にも出たことがないくらいの)
「やりたいことだけやって逃げるのは卑怯やろ?」
「ひぃっ!!」
ヒィ――――!!!
その瞬間、身に危険を感じた私はゴミ箱をシゲへ投げつけた。
─ドゴッ!
よっしゃいい音!
今の隙に逃げるぞ!
私はダッシュを始めた。
とりあえず体育は5なのよ!追いついては来られまい!
って!ついてきてるしぃぃぃ〜〜〜〜(汗)
それもものすっごいスピードです(ギャ〜〜〜)
私は急いでその辺の教室に逃げ込む。
ってオイ!
なんで自ら捕まるようなところに入っちゃってんだよ…!?(汗)
そうだ!机の下に隠れよう!
─ガラッ
一つの机に逃げ込んだ頃、シゲは教室のドアを静かに開けた。
「よぉ!お前がここにおるってことは分かっとるんやで。よくもまぁ、ゴミをぶちまけてくれたなぁ」
まるで悪魔の申し子のような口調。
――――こっ殺される…(汗)
そう思いながらも私は目を少しずつ開け始めた。
すると目の前には…
「見ぃーつけた」
二ヤッと不敵な笑みを浮かべるシゲ。
「ギッギャ――――!!」
そして彼は私を机の下から引きずり出し始めた。
もう逃げる術もなくシュンと大人しくなる。
「…おっ抵抗せんようになったな」
「なっ殴りたいなら殴りなさいよ!」
精一杯威嚇してみせる。
けどそれはきっとアリが象にやってるのと同じくらい無意味なことで…(涙)
「じゃあ遠慮なく俺のプライドをズタズタにした借りは返してもらいまっせ」
すると彼は勢いよく拳をあげた。
「ひっ」
と小さな叫び声をあげ目を閉じる。
その瞬間、BR>
何か暖かいものが私の唇にあたった。
「!?」
思わず目を開ける。
…あっシゲの匂いがする。
何だか安心できる――――…
ってちょぉっと待ったぁぁ〜〜!!
「なっ何したのよあんた!?」
グイグイと自分の手でシゲの顔を押しながら言う。
「お前、俺のこと嫌いなんやろ?」
「…!(ギクッ)」
「図星やろ?」
「…そうよ。アンタみたいな女ったらしなんて大っ嫌いよ!!」
「なぁ知っとるか?好きと嫌いっちゅーのは表裏一体なんやで?」
「は?」
「嫌いに一番近い感情は好きっちゅーことや」
「何が言いたいの?」
「せやからお前もヒョイッと気持ちを変えれば俺のことを好きになるってことや」
「バッバカじゃないの!?そんなことあるわけないでしょ!?」
「なんでや?」
「バカ言わないでよ!アンタみたいなのが私一番嫌いなんだから!それに…」
「それに?」
「アンタみたいな束縛できないような人を好きになっても悲しいだけじゃない」
「男はみーんな束縛を嫌っとるわ。好きな女以外の奴からのな」
「は?」
「まだ気づかんのか?俺が好きなんは、お前やで」
「・・・は?」
眉間にシワを寄せながら私は呟く。
「何?次は私に好きって言ってるあの子みたいに怒らせたいわけ?」
「そうやないわ。あれは向こうが『私のこと好き?』って聞いたから『(友達としては)好きやで』って言っただけやで」
「…最低!」
「なっなんでや?」
「好きって言葉をいろんな人に使うだけでも最低よ!大体…」
「?」
「私、シゲから好かれるほどたいした顔でも性格でもないじゃない」
心のどっかではシゲはモテるって認めてるぶん信じられない。
「なんや、証拠がほしいんやったらまたキ…」
「キスが証拠になるわけないでしょ!?」
もうって思いながらも少し胸の中で小さな疑問が根付いた。
さっきキスされたとき…そこまで嫌な気持ちにならなかった。
どうしてだろう?
頭じゃシゲのこと嫌ってるのに…
「…?」
私は疑問が解決しないままシゲの顔をジッと見つめた。
「…なんや?」
「ちょっとゴメン」
そう言って次は私からキスをする。
「!?」
次はシゲのほうがビックリしてるし…。
「やっぱりだ」
「何がや?俺にはさっきからお前の行動の方がよく分からんわ…」
「…私、さっきからシゲとキスしても全然嫌じゃないのよ」
真剣な顔をして呟く私の顔にフッとシゲは笑って見せた。
「そりゃあ心じゃあ俺を求めとるってことやな」
「……」
でもさっきまで嫌いだったのに…どうして?
「まぁ論より証拠ってやつやな。どや?俺の彼女になってくれへん?」
「え?」
「今ならお試し期間でも佐藤成樹の心が全部ついてくるで?(ニヤ)」
頭じゃあ『もっとよく考えろ』って言ってる。
でも心はシゲを求めてるんだ。
「じゃあ―――…お試し期間ってことで…」
私はそう言うとペコッと頭を下げた。
「決まりやな」
彼はそう言うと私を抱きしめ三度目のキスをした。
その時もやっぱり嫌じゃなかった。
むしろ幸せを感じたくらい…
感情よりも体が先に動くっていうのを初めて体験した日。
それは、シゲと恋人になった日。