-happy birthday dream-












「しっしっしっしまったーーー!!」







事件はとある日の夕方。
なんとなしに手帳を見ていたら…



『8月14日 城光誕生日








わっ忘れてた!!
ってかもう三日後じゃん!!
ど、ど、ど、どうしよう…!
まだ片思いの身ではあるけれど。
これを期に告白!なんて考えてたんだよね!
ってか、その前にプレゼントを買わなくちゃ事は進まないって話よ!







で、何を買おうかな?





………



………









やっやばい!
全然浮かばない!!
城光が喜びそうなもの…?
うーん…
やっぱりこういう時は彼のことをよく知っている友人に聞くのが一番だよね!(よし!)











というわけで呼んでみました!
某選抜の、カズさんと、昭栄です!



ってかファミレスにこいつら連れてくると目立つ目立つ…(汗)



「あ?ヨシが喜びそうな物?」
「よっさんが欲しか物って…むー」






功刀一の答え



「あいつ、チーズが好きやけん。チーズにしたらええっちゃろ?」



…チーズ…?
いや、ちょっと待て…
確かに、確かに喜ぶかもしれないけれど…
好きな男の誕生日に『チーズ』はないでしょう?功刀君?



「はい、カズ退場」



は暴れるカズを無視してお店からけつりとばした。






高山昭栄の答え



「あ、そういえば最近よっさん新しい水着を欲しがっとりましたよ!」
「え!みっ水着!?」
「はい。遠泳用のビキニタイプ(にへら)」



…ビキニ?



「はい、昭栄退場」



は手元にあったお店の伝票と共に昭栄を押し出した。





…ダメだ。
あの二人じゃ話にならないし(酷)
ってかどうしよう…誕生日まであと二日!
…いっそのこと本人に直接聞いてみようかなぁ…





























というわけで次の日



この日を逃したらもうプレゼントは買えない!ということで。



私は学校に行き、グラウンドに向かった。
夏休みだっていうのに大変だね、運動部は。
そんなことを考えながらサッカー部を探す。
遠い先にはサッカー部のメンバーが…



…サッカー部の最初の休憩は10時40分からだから…(把握済み)
よっし。そのときを狙って話しかけましょ…



―スッ



ん?
いま誰かが私の横を通りすぎたよ…



「…あ…」



そこには忘れることはありません!
わが愛しき城光与志忠がぁ!!
このチャンス!逃すもんか!!



「城光!」
「ん?」
私の大きな声に、彼が振り向く。
…ああ…やっぱりかっこいいわ…

夏休みであんまり見てなかったからかな?
すごくかっこいい…(えへえへ/////)
がこんな時間に学校におるなんて珍しかね」
「…あ?え?あー、えっと…実は花の水やり当番の日で…」(ウソです)
「ほぉか」
「あのさ…じ、城光って今…ほしいものとかある?」
「欲しいもの?」
「うん。なっなんでもいいんだけど」
「…そうやな」
「…(ドキドキ)」
「新しい鉄アレイが欲しかね」
「…はい?」
「あとは…前買ったプロテインがもう無くなってきとるけん、あれも欲しかばい」
「…」



城光さんはよく気が利きます。
私もそんな彼の硬派でさりげない優しさに惚れました。
でも、なぜでしょう?
恋愛関係になると激ニブになるのは…(遠い目)



「そっそう」
「それがどげんしたと?」
「え?いやっあっあのね、自由研究に使おうかと思って」
「じ、自由研究?」
「まっあんまり深く考えるな!ってことよ!…じゃっ!」
私はそういうと、城光に背を向けて走り始めた。






























そ、し、て





…はぁ。



結局何も買わずに彼の誕生日が来てしまいました。
こうなれば何でもいいから買っておけばよかったな。
ただ…一番彼が欲しいものを私が一番最初にあげたくて。
それだけだったのに…



チラッと時計を見ると、もう夜の八時。


今頃彼はケーキとか食べてるのかなぁ。
今日彼は何人の人に「おめでとう」って言われたんだろう。



「う゛ー…」



机に顔を近づけながら何度も唸って。



このままじゃだめだ。



そう思って急いで靴を履き替えた。




























─ピンポーン



「はい?」
城光がドアを開けると、そこにはがポツンと小さく立っていた。
…?どっどげんしたと?」
「あ、きっ今日誕生日でしょ?」
「…そうやけど?」
「花火買ってきたので一緒にしませんか?」



の手には抱えきれないほどの花火があった。
息を切らせながら「ごめん、こんなもので」と、言う
そんな彼女の姿に、城光は純粋に嬉しそうな笑顔を見せた。



「ええよ」
「…え?」
パッと顔を上げると、目を細めて微笑む彼の姿があった。
「今からライターとロウソク取ってくるけん、ちょっと待っとれよ」
「あっうっうん」



有り金をほとんど使い切った花火。
そこら辺のあいてる深夜営業のスーパーで購入したものばかり。
こんなの私があげたかったものなんかじゃない。
でも何をあげる?なんて言われても浮かばなくて。



そうしたら花火を手にとっていて―













「待たせたな。じゃあ行くばい?」
「あ、うん」
彼の後姿に歩幅を合わせながらちょっとずつ着いていく。
大きな背中をまじまじと見るのは初めてなので少し恥ずかしい。
「こん近くに公園があるとよ」
「あっそーなんだ…」



なんていいながら着いた公園で、
私と城光はたいした会話もなく花火に火をつける。



―カチッ


―ブアッ!



煙を放ちながら綺麗に彩られる花火たち。
私と城光は小さく体育すわりをしながらその花火を見つめた。



「城光」
「何や?」
「誕生日、おめでとう」
「ん、ああ」
「すっごい…すっごい誰よりもお祝いしたかったんだぁ」
「え?…あー…やけん昨日…」
「…そうだよ…。私が鉄アレイにリボンをつけて持ってくると思った?」
「悪かったって(苦笑)」
「…でもいいや」
「なんでや?」
「こうやって城光と花火できたし」
「…そうやな」
「…え?」
「俺もとこうやって会えて嬉しかよ」



彼がそういった瞬間、ちょうどお互いの花火が消え。
辺りには闇が広がった。



「それってどういう…」



どういう意味か聞きたい。
けど、まだ少し恐くて聞けない。
うん。そんな感じ。



でも聞きたい…



「普通好きでもない女と二人で花火をすると思うと?」



ボァッと新しい手持ち花火をつけて、彼が微笑む。



彼の言葉には言葉にならない幸せをかみ締め、口元は自然と緩んでいた。
そして彼の花火から自分の持っている花火に火を移す。



「誕生日おめでとう城光」
「ああ。ありがとな、











おまけ


「本当にの奴、ヨシにチーズをあげたんかな」
「ビキニにしたとですかねぇ…」
「ま、どっちにしろあの二人は両思いやけん。うまいこといっとるはずやろ」
「よっさんの趣味悪かぁ(ボソッ)」